″もしも″の五 ページ5
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おどおどと揺れ動く瞳。
…この人は、何かに怯えてる?
あ、私か。
そりゃあそうだ。
目を開けたら白髪赤目で、しかも肌まで異様に白い女がいましたなんて誰だって驚くし怯えるだろう。
「ご、ごめんなさい。あなたに害意はありません。
ただ、倒れてらしたので声をかけました。」
手を上に挙げてヒラヒラと揺らす。
多分万国共通の敵意はありませんアピール。
疑い…というか恐怖を滲ませた目は少しも変わっておらず。
こういう場合どうすれば…
「だ、大丈夫そうなら私はもう行きますね。
驚かせてしまってすみませんでした。
あ、あの余計なお節介かもしれませんがこの山熊が居るんで‥気を付けてください。」
ええと、ええと
「そうだ、これ使います?」
腰から提灯を取って傍に置く。
ちらりと一瞥しただけで、怯えた目は相変わらず。
「あの、あの…」
は、話を続けなきゃ。
場を和ませなきゃ!
カチャリと刀が力なく肩に落ちた。
えっと思わず顔を上げる。
静かに閉じられている目。
眠ってしまった見たい。
疲れていたのかな?
流石に肩に刀がある状態は怖いのでそっと下ろす。
うーん。
寝返りが心配だし、一応鞘にしまっておこうか。
ふと空を見上げた。
大変だ。そろそろ日の出。
本当は目が覚めるまで見ていたかったけれど…
タイムオーバーだ。帰らないと。
…でもこの人このままここに居たら風邪引いちゃうよね。どうしようか。
まぁ誰に見られる訳でも無いのだから襦袢で帰ってもいいな。
しゅるりと帯を解く。
着物を脱いでそっと被せた。
まぁ着物一枚で何が変わるというのも無いが、無いよりはマシでしょう。
……さて、そろそろ帰らないと。
最後にもう一度だけその人をちらりと見て、
しずかに山を降った。
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レイレイン - 素敵な話ですね。とても感動しました。ありがとうございます。 (2021年4月19日 20時) (レス) id: 5a04a92c31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2019年4月1日 16時