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″もしも″の十 ページ10

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「どうして色素が薄いのでしょう?」

「祟です」

「祟?」

そう、祟。

「坂田家の先代の話です」

鉞担いだ金太郎さんは、やがて金時さんになりまして鬼退治した暁に、坂田の性を貰いました。

「その鬼の祟り、ですか」

「そうですねぇ。ま、噂ですけど」

多分、だけど。
家系の問題なんじゃないかなと思ってたりする。
私の大叔父も忌み子だった。
大叔父の大伯父も忌み子だったという。
周期的に現れる白子。
近親婚の多いこの小さな村。

「血筋、か」

抗えないな。

「もう一ついいですか?」

「はい」

「どうして私をお助けに?」

ん、答えに困るな。
なんと答えればいいんだろう。
……ええい!迷ってても仕方ない。
ここは率直に

「感です」

「感?」

「はい」

擦り寄ってきた狐の頭を撫でた。
感。それ以上でもそれ以下でも無い。

「虚様を見た時に思ったんです。」

この人は助けるべきだ、と。
その直感に従っただけなんですけど…
こんな説明で大丈夫ですか?
虚様は目を細めて頷いた。
笑っているのかどうかはわからないけど。

「……虚様は、人間が…」

「嫌いです。……しかし、そこに憧れがあり、憎しみがあり、恐れがある」

「そしてその中に安らぎがある。違いますか?」

驚く虚様の見開かれた目。
そんなに私を人だと思っていたの?

「………訂正します。あなたも化け物です」

ゆっくりお面を外した。
その口元は笑っていて。
私も笑った。

「虚様もひとりぼっちですか?」

「ええ、Aさんも?」

「もちろん」

二人で笑った。
自分以外と笑い合うのはこんなにも楽しいものだったけ?
覚えていないや、なん年も前だもの。

「虚様、私は今晩もここに来ます。」

待っててくれますか?

もちろんと微笑むその美しい顔を背に歩き出す。
こんなにも夜が楽しくなるとは思っていなかった。
運命ってこういう事を言うのかな。

早く明日にならないかな。

何年ぶりかにそう思えた。

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設定タグ:銀魂 , , 吉田松陽   
作品ジャンル:アニメ
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レイレイン - 素敵な話ですね。とても感動しました。ありがとうございます。 (2021年4月19日 20時) (レス) id: 5a04a92c31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沖田レイア | 作成日時:2019年4月1日 16時

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