【銀魂】二度目まして初恋の人【高杉晋助】

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「お前が、俺の前にもう一度現れて……追い返すことなんざ、できなくてよ。蓋をしてた過去を振り返ってみて、ようやっと気付いたんだ」


俺は空になったお猪口を置く。
コトリ、という音がやけに響いた。


「あん時さ、お前、泣いていただろう？」


Aが目を見開く。
微かに開いた唇が震えていた。


「信じてぇと思った。あの時の俺が信じていたものを。お前を。春風を愛おしげに見つめる、母親を」


俺はふと微笑んで顔を上げる。


「……これじゃ、答えにならねぇかい？」


Aは何かを言おうとして、歯を食いしばった。
そのまま目を覆って首を振る。


「じゅうぶん……もう、じゅうぶんだよ……」


小さく肩を震わせる姿を静かに眺めている。
俺はそっと目を伏せた。


「なぁ、A。話してくれ。今度こそ本当の事を」


Aは一呼吸置いて、目を乱暴に拭くと顔を上げた。


「……うん、話すよ。６年前から、全部」


知らず知らずに背が伸びる。


「あれは、六年前の、七月中旬。私は……」


Aの言葉を一文字も聞き漏らさないように耳をそばだてた。
静かな夜のキッチンに、Aの何処か悲痛で、しかし淡々とした声が、響く。

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