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台所に入ると、気配に気がついたAが振り返った。
「どれが使っていい湯のみだ?」
「その辺にあるのは使っても大丈夫だよ。ちょっと待っててくれれば入れて持っていくけど……」
Aは洗い物途中で泡だらけの手と俺の顔を交互に見て、困ったように目尻を下げる。
「いや、それくらい自分でやるさ」
俺は適当に湯呑みをとると、緑茶の粉を入れ、電気ポットの下に持っていき__……
ピンポーン。
リビングでは春風も教育番組を見ているのに、やけにインターフォンの音が強く響いた。
Aと思わず顔を見合わせる。
酷く嫌な予感がした。
気配的に銀時、では無い。
もう一度、ピンポーンとインターフォンが鳴らされる。
Aも勘が鋭い奴で、嫌な気配を感じ取ったのか眉を寄せて外を睨んでいた。
「……俺が出よう」
「えっ、でも……」
「いい。お前もわかってるだろ。複数人、いる」
俺は一応舐められねぇように羽織を肩にかける。
今の服装は白いシャツに黒いジーンズなので、薄紫の羽織はなんとも異質だ。
だが、牽制くらいにはなるだろう。
廊下を通り抜けて、俺は堂々と玄関のドアを開けた。
「ンなに鳴らさなくても聞こえてらァ」
そこに広がる想像と違う景色に、思わず一瞬瞠目する。
それは向こうもだったようで、俺の目の前に立っていた男は驚いたように目を見開いていた。
俺はゆっくりと口を開く。
「むさ苦しい男がぞろぞろと何人も、一体何の用だ」
「警察だ。ここにAAさんがいるという情報を受けてここに来た。彼女が関わったとされる詐欺事件について、署でお話をお聞きしたい」
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神桜(プロフ) - 新作ありがとうございます!!! (2021年8月27日 16時) (レス) id: 86ea1c42a8 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 通行人Fさん» コメントありがとうございます!好きと言ってくださってとても嬉しいです!大変励みになっております!コメントありがとうございましたぁ!!!! (2021年8月22日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
通行人F(プロフ) - ヒェッすきです、、、(唐突)毎回良いお話をありがとうございます、、、(尊死) (2021年8月22日 10時) (レス) id: 655b6dcc15 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 神谷さん(ヅラ買ってくる)さん» 神谷さん様!いつも面白いコメントありがとうございます!(実は下書きにし忘れて私自身も不意打ちを食らっていたとは言えない)不器用だけど優しい高杉さんになるように頑張ります!コメントありがとうございます!! (2021年8月17日 15時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
神谷さん(ヅラ買ってくる) - し、新作…!不意打ち食らいました(知るか)優しそうな高杉くん…え、しゅき…あの、無料で見ていいんですか?貢ぎたいんですが。更新頑張ってください! (2021年8月17日 14時) (レス) id: 9406ab1259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2021年8月17日 13時