お母さんとくまさんの事情 ページ40
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子供達がクマの着ぐるみと戯れるのを微笑ましく見守っていると、ふと、視界に嫌な奴が。
その名も土方十四郎。
……なんで海パン?
どこかコソコソしているようにも見えるが、そんな事を気にしてやるような間柄じゃない。
「何してるんだ、義弟よ」
「あ?って、てめえかよ!いや、なんで江戸にいるんだ!?」
つーか、義弟ってなんだと喚く土方にうるさいと顔を顰める。
無駄に吠える駄犬は嫌いだ。
「何してたんだ」
「あれだよ、あれ」
指さす方向に、坂田銀時。
なるほど。彼を尾行中か。
いやはや、流石白夜叉だ。
気配に全く気が付かなかった。
土方はあんなにバレバレだったのに。
「なんか言ったか?」
「なぁんにも?」
鼻で笑うと舌打ちを返してくる。
ほんとうにいい躾をされてきたようだ。
まじでぶん殴りたい。
「で、なんで坂田さんを追ってるの」
「一応の見張りだ。高杉晋助だって元は過激派攘夷志士だったしな」
「晋助さん?」
見えていないのかと呆れながら聞いてくる土方の脛を蹴りつつ指さす方向を再度見る。
……んん?
確かに坂田さんの影に晋助の着物と、少し紫がかった短髪が見えるけど。
「あれ、晋助さんじゃない」
「あ?どう見ても高杉だろ」
いやいや、晋助さんの方がもっと足の筋浮いてるし、歩幅だってもっと大股だ。
それに微妙に身長も違うし、気配がだだ漏れだし。
晋助さんな訳が無い。
晋助さんの気配はもっと優しくて……あ、そう言えばあのクマの着ぐるみと近いかもしれない。
振り返るとまだ二人と戯れてくれているクマの人。
お仕事の方は大丈夫だろうか?
「あ、ほんとだ違ったわ」
土方の呟きに視線を坂田さんへ戻すと、オッサンのズラを握っていた。
……土方。お前まじで打首獄門にするぞ?
あの外国人風オッサンのどこが晋助さんだ。
土に還れこのバカ。
坂田さんらとは少し距離があった為、話している事は聞き取れないが……何故か心優しいクマの人を指さして何か言ってる。
読唇術、やっておくんだったな。
いや、今からでも遅くない?
「ばいばーい」
「ふうせんありがとう!くまさん!」
手を振って去っていくクマの人。
まぁそうだろうな。
一つの家族にそんなに時間は割けないだろうし。
そんな中で二人と遊んでいてくれた事には本当に感謝しかない。
ありがとう、くまの人。
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紫姫(プロフ) - 最後すごく感動しました!!泣いちゃいました (2021年4月4日 13時) (レス) id: c6ba8ff617 (このIDを非表示/違反報告)
あると(プロフ) - 作者名に気付いて驚きました。いくつか読んだことのある作品の作者さんの過去作だとは思わず、何も知らず新鮮な気持ちで一気に読み終えました。まさに今この時期だからこそ、高杉晋助という男が染みました。良い作品でした。素敵な時間をありがとうございました。 (2021年3月18日 15時) (レス) id: ac43156437 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - この作品のモノローグがすごく好きで、キャラクターも好きで最後は、物凄く泣きました。この作品も、作者さんも愛することが出来ました。感情が消えかかっていた私を泣かせてくれて、この物語に出会わせてくれて、本当にありがとうございました。 (2020年3月15日 21時) (レス) id: 45e0f85ae1 (このIDを非表示/違反報告)
chokone_0519(プロフ) - ここまで一気に見させてもらいました。最後の最後でボロ泣きして、ほんとにいいお話だったと思います。これこらも頑張ってください! (2019年12月19日 21時) (レス) id: c032273e58 (このIDを非表示/違反報告)
両足に傷(プロフ) - 完結おめでとうございます!自分の中ではかなりないた部類なのでこれからもまた繰り返して読むと思いますが...w素晴らしいお話でした! (2019年8月16日 2時) (レス) id: 910dd88300 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2019年6月16日 18時