ひゃくさんじゅうきゅう ページ39
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「この間よォ」
俺は縁側で寝そべったまま、手を伸ばしてAの髪を弄りながら言った。
「銀時んとこのガキ……ああ、眼鏡のほうな?が成人したんだと」
Aは微笑んで静かに頷いた。
「アイツなぁ立派に親父の顔してやがったよ。先生に、見せてやりたかった」
「見ていらっしゃるんじゃないですか?意外と」
「否定出来ねぇ」
先生ならやりかねないと笑う。
Aの手が俺の頬に触れる。
そのまま頭をぼんやりと撫でられていた。
「……なぁ相談があるんだ」
「なんでしょう?」
俺は身体を起こして正座する。
俺の改まった雰囲気にAも居住まいを正した。
「……俺ァよ、先生と銀時に出会ってからこっち理由に追われ続けていたんだ。考えるまでもなく俺のしなければいけない道は見えていたし、それが当たり前だとも思ってた」
Aは俺の話を黙って聞いている。
「だが全部片付いて、ただの高杉晋助に戻って見たらどうだ。生きる理由も意味も、何も無い。どう生きていいかもわからない。今思えば、くだらない家、戦場、テロリスト……幸せとは程遠いところに居たから幸せもわからねぇ」
俺は思わず眉を寄せて膝頭に目を落とす。
歯を食いしばって、まっすぐAと目を合わせた。
「俺は……俺は今、生きたいと思ってる。難しいかもしれねぇが、幸せに、なりてぇとも思う。
俺なりに考えた。この体は、俺のものであって俺だけのものじゃねぇ。兄弟子が、先生が。お前が。今はもう居ねぇ仲間達が、繋いでくれたものだ。
A、これは高杉晋助一世一代の我儘と思ってくれていい。
……俺は、寺子屋を開きてぇ。
沢山の苦労をかけると思う。だがどうか、どうか手伝っちゃあくれねぇか、A」
俺が頭を下げると、Aは数秒の間があって、声をあげて笑った。
驚いて顔を上げる。
「真面目な顔しなさるんだから、びっくりしました!ふふ、お願いされなくたって当然お手伝いしますよ。
あなたがやりたい事を見つけた、私は今それがとても嬉しいんです」
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soari(プロフ) - コメント失礼します・・!どうして、どうして投票は一度しかできないのでしょうか?可能なら10点を命尽きるまで押し続けたいです。沖田レイア様の高杉を、キャラ愛を強く感じ、脳内に映像が巡り、私は今感動と動揺で死にそうです・・・素敵な作品をありがとうございます (2021年9月30日 23時) (レス) @page50 id: a5995c2106 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - ユウさん» コメントありがとうございます!!感動して頂けたようでとても嬉しいです!コメント大変励みになっております……ありがとうございました! (2021年9月16日 22時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 悶絶&号泣でした!晋助様大好きで萌えながら読ませていただきました。その後の話まで書いていただけて嬉しいです。これからも応援させていただきます (2021年9月16日 5時) (レス) id: d7bd017054 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます!僭越だなんて……むしろ応援してくざすってめっちゃくちゃ嬉しいです!超モチベになっております!コメントありがとうございました!!! (2021年9月2日 23時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 沖田レイア様、コメント失礼致します!本当に本当に大号泣しました、主様の作品は全部全部大好きです。ありがとうございます。神威の方も、引き続き僭越ながら応援させてくださいっ! (2021年9月2日 2時) (レス) id: ffa5a66e58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2021年6月2日 0時