ひゃくじゅうご ページ15
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「……なんでしょう」
その改まった雰囲気に背筋が伸びる。
緊張しながら次の言葉を待っていると、来島さんは深々と頭を下げた。
「えっ、ちょ、」
「晋助様が……ただの高杉晋助でいられる場所を作ってくれて、本当にありがとうございましたッス」
私達にはきっと出来なかった事だから、と床を向いた口から乾いた笑いが漏れる。
私は胸の前で手首をぎゅっと握り締めた。
「もう一度、あの人と話す機会を与えてくださって、本当に、本当に……」
フローリングに雫が零れる。
震える声は言葉を繋ぐ事が出来なかったようで、来島さんは静かに肩を揺らすだけ。
私が言葉に詰まりながら顔をあげてください、と言うと涙に濡れた瞳に薄く笑う私が映っていた。
「こちらこそ、彼の痛みをわかちあって……鬼兵隊総督でいられる場所を作って下さって、ありがとうございました」
「い、いやそんな……私達は、結局何も……」
「できなかった、なんて言わせませんよ」
私は顔をあげて真っ直ぐに来島さんの目を見つめる。
彼女は少したじろいだように目を見開いた。
「鬼兵隊総督の高杉晋助も、ただの高杉晋助も、どっちも偽物なんかじゃありません。両方彼なんです。私では、片方の彼しか居場所を作ってあげられないから、あなた達は居なくちゃならない仲間なんです」
「あたし達は……晋助様のお役に立てたッスか……?」
私は今度こそ満面の笑みでこう言った。
「おかしな事を仰る。過激派攘夷志士高杉晋助が、役立たずを仲間にする訳がないじゃないですか!」
来島さんは膝をつくと、ポロポロと涙を零し始める。
私はしゃがんでその背を擦りながら、ようやく終わったのだ、と目を細めた。
そして、ようやく、私達の時間が動き出したのだ。
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soari(プロフ) - コメント失礼します・・!どうして、どうして投票は一度しかできないのでしょうか?可能なら10点を命尽きるまで押し続けたいです。沖田レイア様の高杉を、キャラ愛を強く感じ、脳内に映像が巡り、私は今感動と動揺で死にそうです・・・素敵な作品をありがとうございます (2021年9月30日 23時) (レス) @page50 id: a5995c2106 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - ユウさん» コメントありがとうございます!!感動して頂けたようでとても嬉しいです!コメント大変励みになっております……ありがとうございました! (2021年9月16日 22時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 悶絶&号泣でした!晋助様大好きで萌えながら読ませていただきました。その後の話まで書いていただけて嬉しいです。これからも応援させていただきます (2021年9月16日 5時) (レス) id: d7bd017054 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます!僭越だなんて……むしろ応援してくざすってめっちゃくちゃ嬉しいです!超モチベになっております!コメントありがとうございました!!! (2021年9月2日 23時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 沖田レイア様、コメント失礼致します!本当に本当に大号泣しました、主様の作品は全部全部大好きです。ありがとうございます。神威の方も、引き続き僭越ながら応援させてくださいっ! (2021年9月2日 2時) (レス) id: ffa5a66e58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2021年6月2日 0時