さんじゅうきゅうにん ページ8
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今日は事故の後始末が終わり、一段落したので、お登勢の婆さんを口先三寸丸め込んで強奪した休日だった。
久しぶりに、逢いたくなってしまったのだ。
ジーパンとラフなパーカーで運転していた車を、前よりも少しだけ草木が鬱蒼とした庭に停める。
その音を聞いてか、昔ながらの家屋の引き戸がガラガラと開いて、銀時とは少し毛色の違う白髪が顔を覗かせた。
俺は車のドアを開けて外に出ると、
「よぅ」
と、その男に手を上げる。
その仕草と、俺のいたずらっぽい笑みに男はふと微笑んだ。
クールな兄弟子なりの、精一杯の表現だ。
「久しぶりだな、高杉」
「あァ、色々忙しくてなァ……」
ため息をつく仕草をする俺を一通り微笑みながら見つめると、早く入れ、と戸をさらに広く開けた。
昔駆け回り、よくゲンコツをくらった廊下を二人で歩く。
しんとしつつも人の気配が色濃く残る部屋に、そう言えば先生に変わって朧が先生してるんだっけか、とぼんやりと思った。
昔学んだ、懐かしい教室である。
やがてある部屋の前でとまる。
「先生」
「ああ、朧。晋助でしょう?私にはわかるんです。どうぞはいって来てください」
俺達はドアの前で思わず顔を見合わせて、そして笑った。
師匠は相変らすで、誰も適わねぇらしい。
「失礼します」
ドアの先、白いベットの上、体を起こした状態でその人は微笑んでいた。
窓から入る光が眩しい。
「いらっしゃい、晋助」
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しゅっくだいがよくやっと終わりました。
辛かった。
皆さんあけましておめでとうございます。
今年の抱負は「留年しない」。
他作品も随時更新していきますのでどうぞよしなに〜
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鈴(プロフ) - 沖田レイアさん» 返信ありがとうございます!裏話聞けて嬉しいです!!また読みたくなったら読みにこさせていただきますね。ありがとうございました! (2021年2月25日 23時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 鈴さん» 細かい考察、解釈ありがとうございます!裏話というか蛇足というか……一作目はキラキラした死、二作目は死によって残された人々の苦悩痛みその上で前を向かなければ行けない悲しみ……三作目(今作)ではそうなってしまった経緯を書きました! (2021年2月25日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます。”死”や”救い”、”安楽死”などをテーマとした重く暗い今作をお読み下さり、なおかつ深い考察までして頂いて本当に嬉しいです!最終的に皆死ぬという鬱展開作品にお付き合いいただき本当にありがとうございました!!! (2021年2月25日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - うまく文章にできなくてすみません!言いたいことは!ひとつ!この作品面白くて大好きです!素敵な作品をありがとうございました!!┏○ペコッ (2021年2月25日 17時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 特に印象に残った言葉「救いに正解はないと気付いてしまった」にこの作品の高杉さんの根源にあるものに触れられたように感じます。医者の過重労働も医療現場の壮絶さも伝わってきたコロナ禍に合った作品に感じます。 (2021年2月25日 17時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年12月24日 11時