ぜろにん ページ17
.
かつて。
全てを救おうとした男がいた。
この世の誰もを護りたい、と。
だが、その天才は病に倒れ、最期まで誰かを救って死んだ。
そしてその死は弟子達の運命を変え、
一人は未来への糸をつむぎ
一人は生者の救いを
もう一人は、死者へ花を手向けた。
やがて、男は。
一人の少女と出逢う。
それは、誰もが救わない人間だった。
救えない人間だった。
だから、出逢った。
交わした言葉を一字一句違わずに思い出すことができる程深い愛の中。
少女は死んだ。
眠るように死んだ。
男が、殺した。
狂うでもなく、しかし正気ではいられない場所で涙ひとつ零さない男に、
救いに正解など無いということに気がついてしまった友に、手を伸ばす男があった。
お前を救わせてくれ、と。
だが、掴もうとしたものは、手をすり抜け、消えて。
伸ばした手を、諦めて下ろすには認められなかった。
深い悲しみの中、彼は生きた。
そして、生ける人々を護り、救った。
それが、託された役目だと疲れたように笑って。
その言葉通り、彼は。
溺れた子供を助けようと川に飛び込み行方不明になったその日まで。
数多の命を繋いで、生きた。
白髪の男の死体は、未だに上がっていない。
48人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鈴(プロフ) - 沖田レイアさん» 返信ありがとうございます!裏話聞けて嬉しいです!!また読みたくなったら読みにこさせていただきますね。ありがとうございました! (2021年2月25日 23時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 鈴さん» 細かい考察、解釈ありがとうございます!裏話というか蛇足というか……一作目はキラキラした死、二作目は死によって残された人々の苦悩痛みその上で前を向かなければ行けない悲しみ……三作目(今作)ではそうなってしまった経緯を書きました! (2021年2月25日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます。”死”や”救い”、”安楽死”などをテーマとした重く暗い今作をお読み下さり、なおかつ深い考察までして頂いて本当に嬉しいです!最終的に皆死ぬという鬱展開作品にお付き合いいただき本当にありがとうございました!!! (2021年2月25日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - うまく文章にできなくてすみません!言いたいことは!ひとつ!この作品面白くて大好きです!素敵な作品をありがとうございました!!┏○ペコッ (2021年2月25日 17時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 特に印象に残った言葉「救いに正解はないと気付いてしまった」にこの作品の高杉さんの根源にあるものに触れられたように感じます。医者の過重労働も医療現場の壮絶さも伝わってきたコロナ禍に合った作品に感じます。 (2021年2月25日 17時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年12月24日 11時