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よんじゅうににん ページ11

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その日は、平和だった。
銀時と話した、例の悪い予感なんぞただの杞憂で、このまま何もない日として終わるかもしれないとさえ思っていた。

その電話が来るまでは。

公園近くの空き家で火事が起きたらしい。
燃えた家屋は公園側に倒れ、子供やその親が数名軽傷か命に関わらねぇくらいの火傷。
そして、燃える柱から子供を庇って下敷きになった男が一人、重体。
救急で運び込まれると言う。

俺と銀時は思わず顔を見合わせる。
お互い、強ばった顔をしていた。
多分同じことを考えている。

俺はそんな馬鹿な、と頭を振る。
第一あの人はもう思うように体を動かす事は難しかったはずだ。
ありえない。先生が死ぬなんてありえない。

俺達は無言で、険しい顔をしながら救急車の到着を待った。既に手早く、火傷の処置に使う薬品や器具の種類は揃えてある。
やがて遠くからサイレンが聞こえてきて、俺達は廊下を駆けた。救急車から下ろしてすぐに処置できるようにスタンバイしている為だ。

慌ただしく自動ドアが開いて、救急隊と共に担架を押しながらある程度の状況を聞く。
最初に運び込まれた少年は、どうやら件の男に庇われた時に圧迫され、火傷は無いものの肋骨骨折などらしい。それと同じ状態の少年がもう一人いて、三人目に、男。

少年二人を運び込み、銀時と二人、もう一台の救急車を待つ。
二人、手が白くなるほど拳を握った。
大丈夫だ。俺たちふたりなら、何が起きても。

暗示のように自分に言い聞かせる。
サイレンの音と、赤いランプがすぐそこまで迫っていた。

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(プロフ) - 沖田レイアさん» 返信ありがとうございます!裏話聞けて嬉しいです!!また読みたくなったら読みにこさせていただきますね。ありがとうございました! (2021年2月25日 23時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 鈴さん» 細かい考察、解釈ありがとうございます!裏話というか蛇足というか……一作目はキラキラした死、二作目は死によって残された人々の苦悩痛みその上で前を向かなければ行けない悲しみ……三作目(今作)ではそうなってしまった経緯を書きました! (2021年2月25日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます。”死”や”救い”、”安楽死”などをテーマとした重く暗い今作をお読み下さり、なおかつ深い考察までして頂いて本当に嬉しいです!最終的に皆死ぬという鬱展開作品にお付き合いいただき本当にありがとうございました!!! (2021年2月25日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - うまく文章にできなくてすみません!言いたいことは!ひとつ!この作品面白くて大好きです!素敵な作品をありがとうございました!!┏○ペコッ (2021年2月25日 17時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 特に印象に残った言葉「救いに正解はないと気付いてしまった」にこの作品の高杉さんの根源にあるものに触れられたように感じます。医者の過重労働も医療現場の壮絶さも伝わってきたコロナ禍に合った作品に感じます。 (2021年2月25日 17時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年12月24日 11時

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