06匹 :開墾 ページ7
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追撃されないから逃げ仰せたと思っていたが、追っ手が来ていたようだ。
今の船の状況では逃げる事もできない。
神威を助けに行く前に此処で死ぬ、なんて無様な真似だけは出来なかった。
「阿伏兎!追っ手よ!団員を一箇所に集めて!」
「なんだって!?わァった!Aはここに居てくれ!」
パッと行動を開始する阿伏兎に背を向けつつ、私は機械の復旧に尽力する。
……でも、どうして一隻だけ?それも、そんなに大きな船じゃない。むしろ小型船の部類だ。
なぜ、なぜ。
「……っ!」
もしかして……
「阿伏兎っ!」
私は車椅子の後ろに乗っけてある傘を引き抜くと全速力で車椅子を漕いだ。
出入口に団員らの気配がする。
「よぉ、トドメでも刺しに来たのか?ご苦労なこって……」
「ククッ……さて、どうだかなァ」
一人の男と団員らに立ち込める一触即発の雰囲気を断ち切るように、私は傘をぶん投げた。
それはふたつの勢力のちょうど真ん中を通り、ものすごい風と音を立てて船の壁に突き刺さった。
「阿伏兎!その人多分敵じゃない!」
「…………いや、物投げる前に口で言ってぇ!?つーかお前が一番船壊してんじゃねぇか!」
「うっさい!……で、阿伏兎、この人は」
私が視線を向けると男は私を見た。
左目が包帯に隠されている。派手な着物の併せからは鍛え抜かれた筋肉が覗いていた。
「高杉晋助……俺たちが殺せと命じられていた男だよ」
男……もとい高杉晋助はきゅうと目を細める。
私はその目を見つめ、やっぱりと笑い返す。
神威がこの男を気に入ったように、この男も神威を気に入っていたようだ。
でなければ単身敵地へ……それも夜兎の巣窟になんて降り立つはずがない。
「……そろそろ、オンボロ船には飽き飽きしてたんだ。どこかにいい船は転がってねェか?」
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アリア(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます!テスト頑張ってください! (2021年6月10日 23時) (レス) id: 500f657705 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年10月30日 0時