【銀魂】とべないうさぎ【神威】 (ページ40)

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「阿伏兎ー！私達は上がったよ！」

「はいよ」

ドアの前で呼ぶと、短い答えが帰ってくる。
しっかり血を拭いた車椅子に背中を預けながら後ろ髪を横に流した。
雫がポタポタと毛先から垂れ、それが太ももに広がっていく。
夜兎は体が強いから、風邪を引くことなんてまずないけど、それでも大事を取るに越したことはないし、早く髪を乾かしてしまおうと車椅子を押す手に力を込める。
夜兎は髪を三つ編みにして衝撃から首を守るやつが多い(もちろん阿伏兎のような例外もいるが)ので人数分ドライヤーが支給されているのだ。
じゃないと風呂場がドライヤー待ちで混んでしまう。
むさ苦しい男共が密集してるのは、なんか嫌だ。

「でも今度は死ぬ程電気代が……」

と独り言を呟きながら自室の扉を開けて、閉めた。
私が固まっていると、今度は向こう側から開く。
アホ毛を揺らしながら勝手に私の部屋に陣取る神威がにっこりと笑った。

「髪乾かして」

「いやそれくらい自分で」

「髪乾かして」

「……わかったよ……」

私が頷くのを見届けると、神威はさらにニカッと笑って化粧台の前に座る。
化粧なんぞしないが、それも支給品だ。
髪を結ぶ時に鏡があった方が楽だし、ドライヤー置き場になる。

「全く、私が風邪ひいたらアンタが看病してよね」

「はは、いいよ」

熱風を当てながら髪を撫でる。
神威は愉快そうに笑った。