22匹 :刹那 ページ23
.
あ、死ぬ。
目をつぶる暇も無い。
眼前に迫る拳をただ目を見開いて見詰めている。
その瞬間だった。
鈍い瞬きが私の頬のすぐ横を通り過ぎていく。
一泊遅れて目が動くと、それはツカの無いカタナ。
神威は咄嗟に避けた。
頬を薄皮一枚カスって血が出る。
カタナは壁に突き刺さるとビイィンと揺れていた。
横に数回転してガバッと起き上がる。
つり上がった目と口角がヤバイ状態である事を告げていた。
「神威!もう終わり!次打ち込んだら……」
奴は怒声を上げながら拳を振り上げて飛びかかってくる。
「次打ち込んだら、おやつ抜きよ!」
そういった途端拳がピタリと止まる。
かくりと電池が切れたように俯くとふー……と長く息を吐いていつもの笑顔で顔を上げた。
「楽しかった!」
「なら良かったよ。高杉もありがとう」
「いやいや、俺もなかなか楽しかったさ。お前さんはブレイクダンスっつったか?みてぇに戦うんだな」
「足が使えないなら、腕で補うしか無いでしょ。車椅子は瓦礫が多い所では邪魔になるし」
私は神威に抱き上げて貰って車椅子に座る。
頬の傷から滲む血を拭いてやると、もう治っていた。
本当にコイツは怪我の治りが異様に速い。
人間と比べると夜兎も早いらしいがその中でも神威は段違いだ。
「だが、あれだな。総合的には神威の方が強いが腕だけではお前さんの方が強い。たらればは好かねぇがそれこそ足が動いたら、どっちが団長になってたかね」
私は笑った。
「神威よ。私はコイツに五体満足でも勝てる気がしないし、五体満足だったらきっと、コイツに名前すら覚えて貰えなかったと思うわ」
92人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アリア(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます!テスト頑張ってください! (2021年6月10日 23時) (レス) id: 500f657705 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年10月30日 0時