も ページ6
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「ぎーんさん!」
「ぎーんちゃん!」
「ワン!」
元気のいい二人の一匹の声になんだと思いながら顔の上のジャンプをどかす。
「お誕生日おめでとうございます!」
「おめでとうアル!」
「ワォン!」
思わず目をぱちくりさせた。
「なんでオメーら、俺の誕生日……」
「お登勢さんから教えてもらいました」
ああ、そう言えばババアには伝えてあったけか。
青いソファに寝転がっていた体を起こすと、ずいっと紙切れを差し出される。
「はい!これ、姉上がお店のお客さんに貰ったっていう近くのケーキバイキングの割引券ですよ」
「私からは肩たたき券アル」
そう言えば、誰かに祝われるのは、随分と久しぶりな気がした。
もう、あれから十年。
ずっと、一人だった。
胸の奥から込み上げてくれるものが溢れないように一瞬ぐっと堪え、なんでもないように頭をガシガシ掻いた。
「肩たたき券ってオメー、神楽の場合は肩潰し券だろ」
「んだと!やるアルか!?」
「あー!もう、喧嘩しないで下さいよ!」
「アォン!」
久しぶりに、金木犀の香りを意識しない程バカ騒ぎしたもんだな。
ああ、でも。
こっちの方が楽しいや。
なぁ、高杉よ。
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年10月10日 1時