よそじ ページ42
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「あの」
「あぁ!?」
怒鳴り声に少し驚きつつも、銀時様は焦っているだけなのだと言うのが伝わり、口を開く。
「彼は……高杉様は何をなさろうとしているんですか?」
彼は前を見据えたまま少し黙る。
やがて尖った犬歯が見え隠れする口を開いた。
「アイツは、死ぬつもりだ。神殺しの下手人を道連れに」
「どうして……」
「どうして、だぁ?
「復……讐……でもっ!彼は人を恨んでいないって……」
「だからだよ」
銀時様は苦しそうに、呻くように言った。
「だからアイツは、下手人だけを道連れに死ぬうとしてるんだ」
強調された“だけ“という言葉にハッとする。
そうだ、神々が“人間“を恨んでしまったら。
……一体どんなことになるのだろう。
高杉様の社があった山は、主が居なくなっただけで土砂崩れが起きた。
単純に考えて、それ以上の事が起きてしまうのは、明白だ。
さぁっと顔から血の気が引いた私をちらりと見て、ようやくわかったかとつぶやく。
「それが、その恨みが人々に向かねぇように、悪者を下手人……天導衆どもだけに害意が向くように。
奴は牙をむいて死ぬつもりなのさ」
銀時様は顔を顰める。
「予兆はあった……よく考えりゃあ気がつけたはずなんだがな。……俺の手落ちだ」
「予兆……ですか?」
あぁ。と頷く。
よく見ると、銀時様は頬に高杉様のような一本線が入っており、本性に近い姿をしているようだ。
「俺がお前らんとこに行った二回目のとき。俺は結界に阻まれた。元神とはいえただの妖の結界を神の使いである俺が通り抜けられないわけが無いんだ。……神の結界じゃあ無ければな」
銀時様が二回目にいらっしゃった時……そういえば確かにゴンという鈍い音と「フギャ!」と言う声が聞こえた。
あれ銀時様だったんだ……
「その頃からもう既に別の神の力を取り込んでたんだろうな。だが、妖に神は取り込めない」
「なら、どうやって……」
「神と崇めれば神となり、妖と恐れれば妖となる」
え、ええ。とぎこちなく頷く。
それはいつか、まだ高杉様が狼の姿であった時に言っていた言葉だ。
「さて、お嬢さん。あんたは高杉のこと、一体なんだと思っていた?」
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美結菜 - とても面白かったです!完結おめでとうございます!沖田レイアさんの作品は全部見ました。とても好きです! (2023年2月11日 23時) (レス) @page50 id: f842e5f119 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - うわああああ好きぃ...素敵な作品ありがとうございました!! (2022年11月27日 21時) (レス) @page50 id: 546cca6b35 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 小鳥遊。さん» そう言って頂けて嬉しいです!(国語の成績は5では無いっス……)愛してくださってありがとうございます!笑 (2020年11月24日 0時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
小鳥遊。(プロフ) - はァァァ今まで見てきた中で一番綺麗な終わり方ァァァ…絶対国語の成績5…愛してます… (2020年11月23日 23時) (レス) id: f219b8854f (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 小鳥遊。さん» ぐへへ……ありがとうございます! (2020年11月20日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年10月4日 7時