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みそろく ページ36

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火傷のように爛れた手のひらを握った。
獣の頃の名残で人間より長くて硬い爪が患部にくい込む。

痛い、という感覚は久しぶりな気がした。

血が出ても面倒なので、ゆっくりと開く。
痛みを最後に感じたのは、もう何百年、もしくは何千年も前。
神になるために左目を潰した時だろうか。


(……あの頃には、たくさんの神がいた)


八百万、というのもあながち比喩では無いほどに。


(だが、今では……)


Aの寝顔を飽きもせずじっと見つめる。
俺が結野晴明とやらとじゃれ合う前に見たままの、あどけない寝顔。

たくさんの神が死んでいった。


「なればこそ、取りこぼしが産まれた……か」


そっとただれていない右の手を伸ばして頬を撫でる。
うぶ毛がまるで桃のようだ。

頬を緩ませつつ、先程の会話を思い出す。

彼は愚かな事を言った。
だが、唯一の救いは、それが愚かな事だと気付いていた事だ。


「神を、日の本唯一の神を作るのだ」


流石にこれには面食らった。
数度瞬きをして、低い声で言葉を返す。


「……何故、そのような事を」

「わしも知らぬ。正しき事では無いのだけは、わしでもわかるんだがな」


結野晴明は吐き捨てるように言う。


「ならば何故てめぇは神を狩る?」

「わしが止めても聞かんのだ、上の連中は……それに、わしは神殺しなど恐れ多い事はしておらん。
ただ、人に仇なす可能性のあるものを祓っているだけだ」


そりゃ、まあ仕方ねぇな。と右手で頭を掻いた。
そもそもこいつは陰陽師なのだ。
人を守ろうとするのは必然でもある。


「わあった。取引しよう」

「取引?」


結野晴明は胡散臭げな顔で片眉をあげた。


「ああ。お互い、余計な血は流したくねぇだろう?」



んぅ……と微かな声にハッと現実に引き戻される。
撫でていた指がくすぐったかったのだろう。


「悪かったなァ……ゆっくりお休み、A……」


そっと手を離し、頭を撫でてやると、Aは心做しか少し笑ったような気がした。

みそとせまりなな→←みそい



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設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , 高杉オチ   
作品ジャンル:アニメ
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美結菜 - とても面白かったです!完結おめでとうございます!沖田レイアさんの作品は全部見ました。とても好きです! (2023年2月11日 23時) (レス) @page50 id: f842e5f119 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - うわああああ好きぃ...素敵な作品ありがとうございました!! (2022年11月27日 21時) (レス) @page50 id: 546cca6b35 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 小鳥遊。さん» そう言って頂けて嬉しいです!(国語の成績は5では無いっス……)愛してくださってありがとうございます!笑 (2020年11月24日 0時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
小鳥遊。(プロフ) - はァァァ今まで見てきた中で一番綺麗な終わり方ァァァ…絶対国語の成績5…愛してます… (2020年11月23日 23時) (レス) id: f219b8854f (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 小鳥遊。さん» ぐへへ……ありがとうございます! (2020年11月20日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年10月4日 7時

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