にそいち ページ21
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「うーん……特に何も。その変わった事に具体的な例があれば思い出しやすいのですが」
「いや、例えを出してしまったらいけないものだ。感覚でいい。違和感を感じた、嫌な気分になった、なんでもよい」
例を出してはいけないもの、というのは何となくわかる気がした。
結野晴明と名乗った彼の言う変わった事とは、人智を超えたものの話なのだ。
例えという固定概念に囚われていては歪みに気付けまい。
「特には、ないと思います。お力になれずすいません……」
「そうか……ああ、最後にひとつ」
なんでしょう?と小首を傾げると、彼はじっと私を見てくる。
睨みつけられているわけでは全くないのに、圧力を感じる瞳だ。
「この雨、どう思うか?」
「雨、ですか?」
予想の斜め上を行く回答に目をパチクリさせて聞き返すと、彼はああ、と頷く。
「えっと、雨は、寒いなぁと……」
なんて言うのが正解かわからず、適当に思ったことを言う。
今度は彼が目をパチクリさせて、ハハハと笑った。
大人びて見えるが、笑うととても無邪気だ。
「協力に感謝する」
そう言って例をして去っていった彼の背を、見えなくなるまで見送って、バタンと玄関を閉めた。
「帰りましたよ、高杉様」
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美結菜 - とても面白かったです!完結おめでとうございます!沖田レイアさんの作品は全部見ました。とても好きです! (2023年2月11日 23時) (レス) @page50 id: f842e5f119 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - うわああああ好きぃ...素敵な作品ありがとうございました!! (2022年11月27日 21時) (レス) @page50 id: 546cca6b35 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 小鳥遊。さん» そう言って頂けて嬉しいです!(国語の成績は5では無いっス……)愛してくださってありがとうございます!笑 (2020年11月24日 0時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
小鳥遊。(プロフ) - はァァァ今まで見てきた中で一番綺麗な終わり方ァァァ…絶対国語の成績5…愛してます… (2020年11月23日 23時) (レス) id: f219b8854f (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 小鳥遊。さん» ぐへへ……ありがとうございます! (2020年11月20日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年10月4日 7時