とおろく ページ16
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『さて、今日ここに来たのはな、他でもねぇ、縁切りをするためさ』
「縁切り、ですか?」
『あァ。神と社……つまりは御神体なんだが、それらは密接に関係してる。どっちかが死ねば残った方も死んじまうんだよ』
なるほど、つまりこのまま行くと社と共に倒れてしまうから、縁を切ると。
『その通り。確かに寂しいは寂しいがな。背に腹はかえられねぇ』
彼はここで待ってろと言い残すと、するりと本殿の中に入って行った。
やがて、リードをズリながら彼は戻ってきて、静かに辺りの木々に向き直る。
『これで、俺ァここの主じゃ無くなった。……好きな所に行って、好きに生きろ』
ザワザワと大きく木が揺れる。
まるで、高杉様に答えているよう。
『……あァ、俺も寂しいよ。ただ、奴らの思惑通り祟り神に堕ちてやるのも癪だろう?安心しな。俺達が祟るまでもねぇさ』
段々と、ザワザワが小さくなってゆく。
パラパラと落ちてきた葉っぱが、まるで涙のようだ。
『……さ、帰ろうか』
その言葉にハッと我に返る。
「え、ええ。そうですね」
落ちているリードの先を持って、階段の方へと歩こうと足を踏み出したその時。
ざあ、と風が。
とても綺麗な風が背中を押した。
思わず振り向く。
もちろん、そこには誰もいない。
『……お前さん、いい耳を持ってるな。ありがとう、だとさ』
「ありがとう……」
誰が、とか、何について、とか、そんな事を問う気は起きなかった。
ただ、そういうものなのだろうと。
妙に納得して、もう一度振り返る。
深々と例をして、今度こそ、帰り道を歩みだした。
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美結菜 - とても面白かったです!完結おめでとうございます!沖田レイアさんの作品は全部見ました。とても好きです! (2023年2月11日 23時) (レス) @page50 id: f842e5f119 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - うわああああ好きぃ...素敵な作品ありがとうございました!! (2022年11月27日 21時) (レス) @page50 id: 546cca6b35 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 小鳥遊。さん» そう言って頂けて嬉しいです!(国語の成績は5では無いっス……)愛してくださってありがとうございます!笑 (2020年11月24日 0時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
小鳥遊。(プロフ) - はァァァ今まで見てきた中で一番綺麗な終わり方ァァァ…絶対国語の成績5…愛してます… (2020年11月23日 23時) (レス) id: f219b8854f (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 小鳥遊。さん» ぐへへ……ありがとうございます! (2020年11月20日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年10月4日 7時