じふし ページ14
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即日配達の密林でポチッた大型犬用の赤いリードを揺らしながら、彼の不機嫌は秋の陽気に少し消えて行った様だった。
枯れた彼岸花を通り過ぎながら、数歩前を歩く彼に遅れないよう、いつもより僅かに早く足を動かす。
今日が散歩日和でよかった。
雨なんか降っていようものなら私の心が最初に死んでいただろう。
外に出るのは、好きじゃない。
「どこに向かっているんですか?」
『あすこの山……そうだな、つまり神社の跡地に行きてぇのさ』
咄嗟になんと言っていいかわからず、口を噤む。
やっぱり自分が長だった土地の事は、諦めたと思っていても尾を引くものなのだろうか。
「あの……」
『ああ、んな顔しなさんな。別に感傷に浸るために行くんじゃねぇよ。……ただ、確かめてぇ事があってな』
確かめたい事?と聞き返すも彼は笑うだけで答えてはくれない。
『さあ、早く行こうぜ』
「あ、待ってくださいって」
秋の、からりと晴れた青空をふと見上げる。
雲が様々な形で穏やかに流れて行っていた。
『……外に出るのは、そんなに嫌いか』
「え」
『どうなんだ?』
「……嫌いですよ。人間は、よくわからなくて」
『そうか』
彼は喉の奥でくつくつと笑う。
彼独特の笑い方だ。
『んじゃ、早く行って、とっとと帰ろう』
「……はい」
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美結菜 - とても面白かったです!完結おめでとうございます!沖田レイアさんの作品は全部見ました。とても好きです! (2023年2月11日 23時) (レス) @page50 id: f842e5f119 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - うわああああ好きぃ...素敵な作品ありがとうございました!! (2022年11月27日 21時) (レス) @page50 id: 546cca6b35 (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 小鳥遊。さん» そう言って頂けて嬉しいです!(国語の成績は5では無いっス……)愛してくださってありがとうございます!笑 (2020年11月24日 0時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
小鳥遊。(プロフ) - はァァァ今まで見てきた中で一番綺麗な終わり方ァァァ…絶対国語の成績5…愛してます… (2020年11月23日 23時) (レス) id: f219b8854f (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - 小鳥遊。さん» ぐへへ……ありがとうございます! (2020年11月20日 18時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年10月4日 7時