【銀魂】もずのめ【高杉晋助】

百四十三匹 ページ43

.







「さぁて、荷解きしないとですね！」


返事は返ってこない。
おうのさんはぼうっと虚空を見詰めていた。
無理も無い。
おうのさんは心から晋助様を愛していたのだ。


「……やっぱり、明日にしましょうか。今日は疲れちゃいました」


まあ、なんにするにしても生活必需品の入っている箱を開けねばならないんだけど。

晋助様の用意してくださった家は、二人で使うには広すぎるくらいの部屋数と庭を持った、都心近くの平屋だった。
うーん、江戸の地理には詳しくないけど、前に行ったかぶき町からも近いようだ。

もちろん晋助様がくれたのは家だけじゃなくて、お金も、豪遊しなければ一生分くらい食うには困らないんじゃね？ってくらい貰ってる。
当分はって言うか、向こう八十年くらい仕事とか考えなくてもいいかも。

まあ、働きますけどね。
世の中何があるかわからないんで。
金はあるに越したことはないよ。


「えーと、布団の入った箱は……」

「……ねえ、Aちゃん」

「え、あ、はい。なんでしょう？」


まさか話しかけられるとは思ってなくて、アホみたいな声を出しながら振り返る。
おうのさんは泣きそうな顔をしていた。


「……私たち、捨てられたの……？しん様には、私はもういらないの……？」

百四十四匹→←百四十二匹

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す