四十七匹 ページ47
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この三日間、流石に酒浸りだったから。
今日は自重して食堂に水を取りに来た。このままたと肝臓が死ぬ。
「あの……」
「あら、浅野くん」
おずおずとかけられた声に振り向けば、目にハッキリと迷いを浮かべた青年が立っていた。
うんうん。いい傾向だ。
「あの、本当にA様がのぶ様のお仕事を奪ったのですか?」
「あら、じゃあ私が違うと言えばあなたはそれを信じてくれるの?」
「……本当、なんですか?」
青いなぁと微笑む。
深刻そうな顔をした青年は、これだから扱いやすい。
「あなたが信じていない者が、いくら本当だと叫んでもあなたは信じないでしょう?」
浅野くんは言葉に詰まったように黙った。
そう、嘘か真実かなんてそんなものだ。
晋助様もまた子ちゃんも……もし私が本当におのぶさんから仕事を奪ってたとして、きっと私を庇う。
それが人間だ。
「どうせ、あなたの中で誰が悪者かなんて決まってるんでしょ。だったらそれを信じなさい」
「……わかりました。ありがとうございます」
浅野くんはぺこりと礼をして、踵を返した。
「ああ、そうそう浅野くん」
浅野くんは振り返って私を見る。
その目にもう迷いはない。
純粋ない人は、確かに信用できるけど、扱いやすいのか難点だ。
こうやって直ぐに敵に騙される。
「一応言っておくと、私は誰の仕事も取ってないよ」
「ええ、わかってます」
浅野くんは微笑むと、今度こそ振り返らずに歩いていった。
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coma7672(プロフ) - すいません!前のコメント間違えて送信してしまいました、、お話最高すぎます!更新楽しみにしています!! (2020年4月7日 23時) (レス) id: 46f7afe943 (このIDを非表示/違反報告)
coma7672(プロフ) - 高杉晋助 (2020年4月7日 23時) (レス) id: 46f7afe943 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年1月12日 19時