三匹 ページ3
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「私は練習場に行くので、ここでお別れっス!」
「あ、部下に稽古つけてるって言ってたもんね。怪我しないように気をつけるんだよ」
「わかりましたっス!じゃ、また!」
「うん。またね〜」
地下への階段を降りていくまた子ちゃんの姿が見えなくなるまで手を振る。
また子ちゃんは元気な子だ。
優しくて明るくて気遣いがあって。
そして、顔もいい。
ホント、天使みたいな子だよ。
…………さて、部屋に戻って仕事しますか。
ああ、書類仕事じゃなくて、三味線弾きたいぃ。
私の本職はそっちなんだし。
もちろんそんなわがまま言わないけどさ。
それでもやっぱり弾きたいは弾きたいじゃん?
いいや、今夜は気が済むまで弾いちゃる。
なんて、呆っと歩いていると。
なんと角から晋助様とおうのさんが歩いてくるではないか!
控えめに言っても、地獄だね!
取り敢えず道を空けて。
「こんにちは、晋助様。そしておうのさん」
と、礼をとる。
だって旦那様やし。
上司やし。
鬼兵隊の絶対神やし。
「ああ、こんにちは」
「……早く行こ!晋助様ぁー」
顔を上げると、目の前を通り過ぎる一瞬。
ニタリと笑う晋助様の顔が見えた。
彼は多分、楽しんでいるのだ。
正妻と妾のやり取りを見て。
もちろん晋助様はとても私達常人には測りしれるものではなく。違うかもしれないけれども。
少なくとも、当たらずとも遠からず、という感じだろう。
だって彼はきっと。
おうのさんの事を愛していない。
「……」
まあ、晋助様を愛していない私が言うことではないか。
私は妻としての『仕事』をしてるだけ。
そこに愛は要らないわ。
私はあなたに女よけとしての立場を。
あなたは私に復讐の片棒を。
政略結婚ですらない。
ただ、利害が一致ただけなのだから。
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coma7672(プロフ) - すいません!前のコメント間違えて送信してしまいました、、お話最高すぎます!更新楽しみにしています!! (2020年4月7日 23時) (レス) id: 46f7afe943 (このIDを非表示/違反報告)
coma7672(プロフ) - 高杉晋助 (2020年4月7日 23時) (レス) id: 46f7afe943 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年1月12日 19時