【鬼滅の刃】幸せ者の胃は崩壊寸前

宵五つ ページ5

「カナヲ、入っていい？」


互いに無言のまま、二人の妹、カナヲさんの部屋の前まで来た。

襖越しにしのぶさんが声を掛けたが、何故か返事がない。



「入るわよ」


あ、入っていった。

とうとう痺れを切らしたしのぶさん。

Aもその後ろに続こうとするが、待てよ、と一歩進んだところで足を止めた。



はたして、こんな得体の知れない無口女(自覚済)が入ってきてもいいのだろうか。

カナエのような優しき人間だったなら間違いなく警戒はされないだろうが。


見てみろこの容姿を。

黒髪が腰まで伸びており、前髪は顔に影がかかるくらいに雑に切られている。

もう完全にオバケやん。


まあ兎にも角にも、大人でもなんやコイツ、ってなるのに子供が受け入れられるはずないだろう。


なんてあれこれ考えているうちに、しのぶさんがカナヲさんの手を握って連れてきてくれた。

でもやっぱり、しのぶさんの後ろに隠れてついてきてる。

……怖がられてるなぁ。



「なに呆けてるんですか。早く済ませたいので行きますよ」


相変わらず辛口だけど……しのぶさん、カナヲさんを怯えさせないように少しだけ柔らかい口調になってる。

カナエがしのぶさんにやってきた事のように、しのぶさんもカナヲさんにそうしているんだ。

姉妹愛って素敵だなぁなどと、ぼんやりと昔の光景を思い出す。


けれど、過去など振り返っていても、何も起こりやしない。

そう言い聞かせ、記憶に蓋をした。

宵六つ→←宵四つ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す