宵三十三 ページ33
キンッと、鉄と鉄がぶつかったような音が響く。
驚く暇も与えてはくれず、童磨はAの腕を掴もうとするが、すぐさま避ける。
__散り蓮華
「楽しませておくれ」
追い討ちをかけるように、Aに向かって氷の花弁が咲き散った。
「ッ」
「凄い凄い!もしかして全部捌こうとしてる!?頑張り屋さんだね!!」
宵の呼吸は、ほぼ一撃必殺のようなものである。護りに特化した技は、宵の呼吸にはない。
となると捌くか避けるかの二択だが、今彼女の背後には、重症のカナエがいる。
「避けたらカナエちゃんに当たるもんねぇ。回避できる攻撃を受けるなんて、感動するなぁ」
Aの身体に容赦なく突き刺さる氷の花弁。刺さった場所からは、血がだらだらと流れる。
そんなAを見て、でも、と童磨は付け加える。
「その前に君が死んじゃうよ?体中が冷たくて、痛いだろうに……」
「A……ちゃん……逃げ、て……」
「ほらほら、カナエちゃんも言ってるよ?俺は優しいから、今ならさっきの言葉を取り消してあげよう」
「提案を受けるって、言うんだ」
差し伸べられる手が、過去と重なる。
『お前は幸せ者だ』
まるで何かに取り憑かれたかのように、肩が重くなって。
『だから、己ではない誰かを守れ』
飾りきった言葉は、Aの手を動かす。
「さあ、おいで……Aちゃん」
__パチンッ
「え?」
素っ頓狂な、童磨の声。
「いま、何したの」
見て分からなかったのか。
払い除けたんだ。
そんな明らかに怪しい手を、誰が掴む?お母さんに言われなかった?怪しい人には着いていっちゃ駄目だって。
なんて心の中ではボロクソ言っているが、一言も伝わっていないのがなんとも虚しい。まあ要約すると、
『ばーか』
である。時間稼ぎに使わせてもらったという意味を込めて、Aは微笑んだ。
「やってくれるねぇ。全部芝居だったんだ」
いやこれのどこが芝居に見える?体中にグサグサ氷が刺さってるけど、どうしてくれるの?
残念ながら、これも一言すら伝わっていない。
「はぁ……もう夜明けも近いなぁ」
うんうん、だからさっさと帰っておくれ。体が休息を求めてるんだ。
視界はふわふわしてるし膝は笑ってるし、大変だなこりゃ。
「カナエちゃんだけでも、救ってあげないとね」
「……」
何言ってんだこの鬼。
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息抜き(プロフ) - カカさん» コメントやお星様までありがとうございます、頑張りますね(*_ _) (2020年1月14日 1時) (レス) id: 1ca44e1fd0 (このIDを非表示/違反報告)
カカ(プロフ) - 主人公の周りのキャラの優しさが滲み出ててすごいよきです、、、。見る度にお星様を押してしまいます。更新の方無理をなさらずに頑張ってください! (2020年1月14日 0時) (レス) id: c193d50bb9 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - ばぐさん» コメントありがとうございます。私もコメントが来る度に飛んで喜んでます。頑張りますね<(_ _)> (2020年1月8日 18時) (レス) id: 1ca44e1fd0 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - とても面白くて通知が来る度 飛んで喜んでいます!これからも頑張ってください! (2020年1月8日 18時) (レス) id: c64457db9e (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 無気力人間Aさん» コメントありがとうございます。更新頑張ります<(_ _)> (2020年1月7日 19時) (レス) id: 1ca44e1fd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2019年12月2日 1時