【鬼滅の刃】幸せ者の胃は崩壊寸前

宵十五 ページ15

幸せ者、私は幸せ者なんだ。

悩んでいるわけでも、困っているわけでもない。

私はちゃんと立ち止まらずに前に進めている。


何度も何度もそうやって自分に言い聞かせる。屋敷を出てから、Aはいつも以上に下を向いて歩いていた。



「……ちゃん！Aちゃん！！ 」

「っ！？」


え、呼ばれてた？


「大丈夫……？」


うんうんと何度も頷く。

そういやカナエとは、柱合会議が終わったあと一緒に帰ってるんだった。



「そうだわ！ちょうどお昼だし、寄り道していかない？」


このあと用事はなかったはず。

また頷くと、カナエは私の手をとって歩き出した。


この時、Aの表情は少し、ほんの少しだけ緩んでいた。
お館様のお話の件で考えたくなかったのもあり、カナエの誘いは嬉しかったのだろう。



「気になってるお店があるのよ〜」


妹さんたちとは行かないのだろうか。カナエの誘いなら、喜んで行きそうなのに。


ジー


「うどんが人気らしいわ！」


へえ、うどんはあんまり食べたことないから興味あるなぁ。


ジー……


「さ、最近出来たらしいのよ〜」


ふ、ふぅん。最近出来たのに人気だなんて、ますます気になるなぁ。


ジー…………


「ね、ねえAちゃん。私の気のせいかしら？なんだかすごく視線を感じるわ……」


私も私も、と必死に首を縦に振った。

そして互いに顔を見合わせると、視線の元へ目を向けた。


＿＿シュバッ！



……なんか居たよな。姿は見れなかったけど路地に残像が入ってたもんな。


再び顔を見合わせ、今度は勢いよくそちらを見るが、やはり残像しか見れない。



「これは……気のせいだわ。ええ、気のせいだったわ……」


そうは言うものの、目は諦めていない。


カナエの意思を汲み取ったAは、息を合わせ、視線の主が油断した瞬間を狙った＿＿



「なっ」

「あら……






＿＿冨岡さん？」

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