十三話 ページ14
剣心とA、二人の菫色の瞳の視線が交わる
剣心の優しい声と、手から伝わるぬくもりは、Aの緊張の糸を断ち切った
『…ふふ、薫さんと貴方の分はとびきりたくさん用意しておきますね
帰ったら、三人で夕餉にしましょう』
そういって、Aは薫とともに山形に背を向けて歩き出した
薫「Aさん…」
帰る途中、薫は思わず立ち止まって声を出した
数歩先を進んでいたAも、薫にあわせて止まり、振り返った
薫「(どうしよう…思わず声を出したけど、過去は聞かないって言っちゃったし…)」
声をかけたはいいものの、それからどうしようか薫は何も決めていなかった
しかし、Aの声がその沈黙を破る
『薫さん……
今日の夕餉は何がいいですか？』
薫「…はあ？」
『昼餉を食べてないですし、お腹すいたでしょう？
何かご希望はありますか？』
『できる限り、希望に合わせておつくりします』なんて微笑んで言うAに、薫は呆然とした
薫「(山形陸軍卿に逢って、聞くことが夕餉ってーーーー)」
この時、薫はAとはどこか飛びぬけた人物であると再確認した
薫「私、Aさんのご飯は美味しいから何が出てもうれしいわよ」
タタッ
薫は名前の隣へ走ると言った
薫「昼餉も食べ損ねたし、私もお腹すいちゃった！
早く帰りましょ！！」
『それは…夕餉は豪華にしないといけませんねぇ』
そういってAは口元に笑みを浮かべた
夕日の中を歩く二人の姿は、普通の町娘と同じであった
一方、背を向けたAを、剣心と山形はその姿が見えなくなるまで見つめていた
剣心「…山形さん」
山形「ひむ…」
「緋村」と呼ぼうとした声は、最後まで出なかった
山形へと振り返った剣心の眼光が、まるで幕末の時のような鋭さを持っていたからである
剣心「Aがどのような経緯で維新志士になったのか…知らないわけではないでしょう」
山形「緋村…」
剣心「Aに何かするつもりならーーーーー
“俺”はたとえ相手が誰でも許さないし、容赦しません」
それだけ伝えると、剣心は買った味噌を持ち上げた
剣心「では拙者はこれで」
そういって山形に背を向けた剣心もまた、人斬りではなく
道行く一人の民衆であった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 314人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彩蘭(プロフ) - すごく面白いです!夢主ちゃんのかっこよさと綺麗さがめっちゃ好き!更新頑張ってください! (1月25日 15時) (
レス) @page14 id: 76f42516d3 (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ(プロフ) - 続き待ってます！ (12月31日 0時) (レス) @page37 id: 42fa138aff (このIDを非表示/違反報告)
あやなん(プロフ) - 陽始さん» ありがとうございます！カメ更新ですがお付き合いくださいませ！ (12月17日 22時) (レス) @page37 id: 02dc14a173 (このIDを非表示/違反報告)
陽始(プロフ) - るろ剣は最近はまったばかりですが、水無月ちゃんの大人っぽくてかっこいいところが好きです！頑張って下さい！！ (12月1日 9時) (レス) @page36 id: 27cc70538e (このIDを非表示/違反報告)
lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月12日 20時) (レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやなん x他2人 | 作成日時：2020年10月14日 22時
