明日は公休と致します【S.S】 (ページ5)

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「お、おかえりー！」

玄関に向かって声を張る
さっきの写真に動揺して、声が上擦ってるのが自分でもわかる

カレ「ただいまー」

普通じゃん

カレ「あれ？プロジェクト落ち着いた？俺、先シャワー浴びてくるわ」

前言撤回
普通じゃない

いつもならリビングに来てハグやら、キスやら、空いた時間を埋めるようなカレからの愛が降ってくる

でも今日はカレの声が遠くて、それと同時に洗面所のドアが閉まる音がする

先に、シャワー？
キャンプの後だし、汗でもかいたのかな…

私はどこか胸騒ぎを覚え、カレのいる洗面所へと足を進めた

お風呂場に行くと、カレはちょうどシャワーを浴びようと浴室のドアに手をかけているところだった

カレ「ただいま。遅くなってごめんね」

「ううん、おかえり」

カレ「お、おお。なんだよ」

カレの温もりを少しでも感じたくて思わず腰に手を回す

カレは高卒で働き始めた、社会人のセンパイだった

高校大学と進んだ私よりひと足先に社会の酸いも甘いも味わった大先輩

仕事を辞めたいと見ず知らずの私が愚痴をこぼした時も『お前の代えなんていくらでもいるんじゃねえの』なんて冷たくあしらった

それが私の心を殺さないための愛の鞭だと知ったのは付き合い始めてからだった

"彼氏彼女"の関係になるためにお互い努力した

低賃金と言われる土木作業員と、駆け出しの女社長

カレはいつもより夜遅くまで仕事に精を出し、私もより多くの顧客を手に入れるために自分で営業先に多く足を運んだ

だからカレに『やっとAの彼氏に相応しい男になれた気がする』と言われた時は本当に嬉しかった…

『お前って意外とフツーだよな』そう言われ続けた学生時代の恋愛はボロボロ

一緒にいるだけで、お互いを想い合えるだけで幸せ、そういう関係を求めてる私にとって、
まさに"理想の彼氏"

カレ「なに？そういう気分？」

カレの耳が紅く染まる

「ち、違う！！」

カレ「なーんだ。俺がいないの寂しいかなーなんて思ったんだけど、そうでもない感じ？」

「そんなこと…ないもん…」

カレ「なんてー？聞こえなーい」

じゃ、俺シャワー浴びてくるわ、そう言って私にキスしてお風呂場に消えた

ああ、やっぱり好きだな…
キスはしてくれたし、浮気なんてするわけないよね

本当に信じていいんだよね

大丈夫だよね

ー浮気、されてない？

さっきのフミの言葉が頭の中をぐるぐるまわる

私は自分の言葉を信じるかのようにカレの鞄に手を伸ばした