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長谷川「なんで電話に出ないんだよっ!ちょっとこっち来いよ!」
突然大きな声を上げた長谷川の目線の先にはキッと鋭く俺を睨む松川と
魂の抜けたような目をしてこちらを見るAちゃんがいた。
馬鹿な俺は彼女の瞳が自分に向けられていることが嬉しくて一瞬、この状況から意識が遠のいた。
彼女は歩みをこちらにむけるとピタリと目の前まで来て、下から少し見上げるようにこちらを覗き込むと
A「久しぶりだね、元気にしてた?」
と、まるで人形の様な生気のない眼をしてニヤリと笑った。
この時、背筋が凍る思いをしたのと同時に
彼女を変えてしまったのは紛れもなく俺だったのだと確信した。
その後の長谷川と松川の会話は一切耳には届かず、俺は目の前にいる別人の様な彼女の強い目線に捕らわれて身動きがとれなくなっていた。
「Aちゃん、ちょっと話せる?」
撥ね退けられる覚悟は出来ていたけど、どうしても彼女をこのまま帰すわけにはいかなかった。
A「イイよ。」
意図も簡単に了承をした彼女は長谷川と松川をこれっぽっちも気にする様子も無く、2人に笑顔で手を振ると「行こう?」と、俺の前を歩いた。
慌てて彼女を追いかけ、間を持たせる様に言葉を投げかけても冷たくあしらわれるだけで
A「で、話って?」
と、腕を組みながら面倒くさそうに言い捨てられた。
どんなに酷い振る舞いをしていても
彼女はやっぱり彼女のままで
綺麗にメンテナンスされている髪や、丁寧に仕上げられたネイル、時折見せる仕草や表情は昔の彼女となんら変わりはなかった。
A「ねえ、こんなとこで立ち話も何だからどっか静かなとこで話そうか。」
彼女にそう言われ、俯いていた頭を上げると
A「あそこ。あそこで話そう。」
と、二度と思い出したくないあの場所を指差して笑みを見せた。
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ホテルの部屋へと続くエレベーターに設置された鏡に2人が写る。
あの日キミはどんな想いでこのエレベーターに乗っていたのだろう…
胸が軋む…
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彼女は部屋の前に着くと手早く扉を開け、室内をゆっくり見渡してこちらに顔を向けた。
「あの、あちゃん。」
怖気付き、無理に声を掛けた。
その時、彼女は…
一生懸命に笑っていた……
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nikiki(プロフ) - あっ、見えない原因が多分分かりました笑 ありがとうございます (2020年4月26日 15時) (レス) id: f8ae1d9c82 (このIDを非表示/違反報告)
Ika2424(プロフ) - nikikiさん» コメントのお返事遅くなり申し訳ありません泣 3なのですがフラグが立ってしまいまして18歳未満は観覧出来なくなってしまいました…折角読んで頂いているのに申し訳ない次第です!18歳以上で御座いましたらそのままご覧頂けるかと思います(o^^o) (2020年4月26日 2時) (レス) id: 97f9b005f0 (このIDを非表示/違反報告)
nikiki(プロフ) - 失礼ですが、どこで3を読めるですか?続きすごく気になります!ありがとうございます。 (2020年4月25日 5時) (レス) id: f8ae1d9c82 (このIDを非表示/違反報告)
nikiki(プロフ) - 初めまして、ストーリー見つけてハマっちゃって一気1と2も読みました。2人の恋、大人になって生活環境変わっても変わらずで居るのに、互いに届けてなくてこっちまで胸ギュッて悲しくなりました。素敵なストーリーありがとうございます。 (2020年4月25日 5時) (レス) id: f8ae1d9c82 (このIDを非表示/違反報告)
Ika2424(プロフ) - てんさん» こんなノロノロ更新に飽きずに見て下さってありがとうございます!何だか手違いで書いたものが消えたりとトラブってました汗)恋って楽しいけど苦しいですよね。2人がどんな選択をするのかたのしみにしていて下さい(^人^) (2019年7月1日 0時) (レス) id: 832d371e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Ika2424 | 作成日時:2019年4月7日 8時