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運命5 ページ6

「ハァッ、ハアッ……」

サラサラの金髪を靡かせ走る少年は、後ろを見て足を止めた。

誰もいない…そう呟き、息を吐いた。

その息は、安堵とも悲しみともとれる感情が入り交じっている。

途端、背後でジャリッとアスファルトを歩く音がした。ただ驚いただけ、とは思えないような表情で振り向く少年。

後ろには、1匹の猫……

「猫の匂いにも気付かないなんて、どんだけ気が動転してんの…俺」

弱々しく乾いた笑いをこぼす少年の体は、少し震えている。拳が、強く握られた。

「あの時じゃないんだから、大丈夫なのに…」

あの時じゃない、ともう一度自分に言い聞かせる少年の瞳には、大きな苦しみが宿っている。
横では、さっきの猫…黒猫が、金色の瞳で少年を凝視している。

すると、少年が気付いたようにポケットに手を入れ、微かに震える携帯の画面をタップした。
どうやら、着信がかかってきたようだ。

「もしもし…湊っ!」

どうしたの?と驚いたように聞く少年に、電話口に居る湊と言われた少年は、金髪の少年とそっくりの声で明るく答えた。

『都合が合って、もう空港に居るんだ!今から帰るからさ…』

「はいはい、迎えに行くよ」

クスッと笑う少年は、さっきまでとは違い朗らかな表情だった。

『サンキュ、翼!それで、どう?大丈夫…なの?』

湊がそう言った瞬間、少年の雰囲気が一気に変わった。暫くの無言の後、フッと笑ったのは…翼の方だ。

「まだ大丈夫…まだ、ね。でも、覚悟は出来たから」

湊は少し驚いた後、悲しそうな安心したような声でそっか、と呟いた。

『決めたんだね…翼には悪いけど、ちょっと安心してる。ホントにいいんだな?……友達と離れることになっても』

「なに、それ。俺の一番は湊なんだからな。双子なんだし、それくらい分かってるでしょ?」

『…詳しいことは会って話そ。バイバイ』

バイバイ…翼は呟き、携帯をポケットに入れた。
すぐに電源を切る。
きっと、他の子からの着信を拒否するためだろう。

そして、そばに居る黒猫をソッと撫でた。
金色の目を細めて威嚇する猫に、小さく笑いかける。

「黒猫は、幸福と災いをもたらすんだろ?俺に笑いかけるのは、どっちなの?」

黒猫はニャア、とないただけだ。
その空に消え入りそうな問いかけは、猫にしか聞こえなかった。

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由希 - 面白い!更新頑張って!楽しみにしてます! (2022年4月10日 20時) (レス) id: 2f26b28cc8 (このIDを非表示/違反報告)
みずは翼(プロフ) - 由香里さん» ありがとうございます!頑張ります!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 9487e9fcb1 (このIDを非表示/違反報告)
由香里 - 面白いです!更新頑張ってください! (2019年9月2日 15時) (レス) id: 70dce2c9c8 (このIDを非表示/違反報告)
みずは翼(プロフ) - 吹雪姫さん» ありがとうございます!他の作品も応援してくれて、嬉しいです!!頑張りますね♪ (2019年8月14日 22時) (レス) id: 9487e9fcb1 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪姫 - 続き頑張ってくださいね!応援しています! (2019年8月14日 18時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みずは翼 | 作者ホームページ:http://mizuha.uranai@tututu  
作成日時:2018年12月15日 23時

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