儚い運命は知っている

運命12 湊side ページ13

今日は翼と入れ替わって浜田に行く、一日目。
友だち関係、勉強の進み具合、係･委員会の有無…
1回聞けば、全部分かる。

顔は一緒なんだ。下手な発言をしない限り、多少のことは笑ってごまかせれるはず…

この考えが知らぬうちに自分を傷つけ、浅はかだったことに気付くのは、もう少し先のことだった……


「おっす、ツバサ！」

「今日もカッコイイなぁ…」

「今からバスケやるんだけど、お前もやらね？」

登校すれば、周りに群がるクラスメイトらしき人たち。
疑う様子は微塵も感じられず、安心する。

まぁ俺と翼はホントにそっくり。
実の母親も分かんないだよ？そこらの他人が、分かるはずがない。

「おはよ。わりーけど、今日はパス。」

適当な理由で男子を追いやると、次に寄ってくるのは女子。

「ツバサァ、放課後一緒に遊ばない？」

友だちじゃないただのクラスメイトの遊びの誘いは、絶対に乗らない。
翼には何も言われてないけど…翼なら行かないでしょ。特に、女子となんて。

そう思いながら、翼が入っていたという“探偵チームKZ”の唯一の女子の、立花彩の席を見た。

…まだ来てない。

翼はあの子と親しい関係にあったはず。
なら、あの子と七鬼は絶対俺にコンタクトを取ってくる。
…バレないようにしなくちゃ。

翼は“友だちとの別れ”はきっと告げる。
でも、その友だちの中に“探偵チームKZ”の皆は含まれていないだろう。

だって、翼が言ってたから。

『アイツらには、心にもない酷いこと言って退団してきたから…早く俺の事、忘れて欲しい』

辛そうな、悲しそうな瞳を伏せて。


…なぁ翼。本当に、フランスに行きたいのか？
俺は、そっちの方がいい。

翼にはもう誰も信じて欲しくない。
誰も、翼を裏切らないで欲しいから。

でも、俺がどんなにそう思っても、お前は変わっていってる。
人を信じようとしてるだろ？

探偵チームKZのメンバーの話をしてるだけで、目がキラキラしてた。

もうあんなことにならないんじゃないか？
俺のしてること…フランスへ行くことは、翼をより苦しめるだけなんじゃないか？

色んな思いが渦巻くが、あの事を思い出すとまた背筋が震える。

やっぱり、超記憶症候群の翼を放ってはおけない。
そう決心し直し、前を向いた。


……翼が密かに決意していたことも知らないまま…

運命13→←運命11 彩side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す