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「和は歳上がタイプだっけ」
「そ!最近大学生の人とDMしとって、ちょっと頑張ろうかなって」
「えっすごい!いいじゃん!この前軽く話した人?」
「そ。その人。いや、でもちょい微妙かも。慎重にしすぎたかもしれん、後輩の可愛がられ方されてる感じする」
「あれ、押せ押せの和が珍しい」
「顔タイプすぎた」
「顔かい」
片手パン装備の和は、空いているもう片方の手でスマホを操作し、どうやらお相手らしいアカウントを見せてくれた。
大学生といえば、からは少し外れた、黒髪でややあどけない雰囲気の男の人だ。たれ目がちなためか、個人的には大人しそう、穏やかそう、という第一印象が残った。
「かっこええやろ」
「うん、かっこいいと思う」
「こんな感じやとぐいぐい行ったら嫌われるやろなと思ってさ」
あー、と思わず納得の声が出た。見た目しか知らない以上なんとも言えないが、急に距離を詰められると驚いて逃げるタイプと言われれば印象として心にストンと落ちる。
「後輩ポジションから彼女に昇格するって感じも作戦としてはありじゃない?」
「そうなんかなー?」
「だって、少なからず好感を持っている仲良い人が急に異性になる展開って……ドキドキしない?」
「…………する!」
和がそれだ、みたいな感じで私を指さす。
彼女のワゴン車の排気口ぐらいの大きさの声が教室内に響いた。
「ほんまにがんばろぉ〜たのしみ」
「経過と諸々聞かせてよ」
今後の展望が見えてか、ご機嫌になった和の口に激励のコロッケをはんぶんこしてプレゼントした。彼女はそれを咀嚼し飲み込んでから、私の野次馬精神に「もち!」と元気にサムズアップで返事してくれる。
「ま、Aも他人事やあらへんで」
「からかうんじゃありません」
わざわざ話題を逸らしたというのに。しぶとくも再来した話は、もはや逸らす先すら見当たらず、スンとした真顔でシャッターを閉めて打ちとめた。
(私は今までいわゆる恋バナとかいう時間を聞く専で突き通してきたおかげで、自分の話をすることが苦手だ)
「ええー?聞きたいなあ、Aちゃんのタイプの人とかぁ。気になって夜寝れないよぉ」
「コロッケもう半分いる?」
「はい黙りまーす」
ご覧の通り、和は話のわかる子だ。
彼女のわざとらしいねちっこく甘い声を塞ぐための
さようなら、尊大たるかぼちゃコロッケよ。
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エコ - かなけんさん» 感想ありがとうございます。メチャクチャに嬉しいのですが、この感動を言葉に表すに足る語彙力がないので、うまく伝えられなくて申し訳ないですが、本当に本当に嬉しいです。スクショしてにやにやするぐらいです。遅筆ではありますが、これからもよろしくお願いします。 (2022年3月28日 23時) (レス) id: 3464e68ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かなけん(プロフ) - めっちゃ好きです!!毎回更新されるの楽しみすぎます!!💞 (2022年3月27日 22時) (レス) @page19 id: 4ee55b59ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エコ | 作成日時:2022年3月13日 23時