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土曜、昼食時を迎える頃。
いつもならそろそろ空腹で部員たちの注意力も漫ろになり始めるが、今日は差し迫った大会に向けて体育館の予約が入っていた。
運動部の昼休憩を狙って顧問が体育館をもぎ取ったのだ。少なくとも私たち吹奏楽は一応文化部のくくりで、体育館となると途端に肩身が狭くなるものだが、我々顧問の何と頼もしいことか。運動部だって大会が近いのは同じなのに。
「無理言って一時間確保したから。時間無駄にしないように」
すごい……無理言った割に一時間も貰えるんだ……。
校内で一番広い体育館の扉の前。中からは昼休憩の号令らしい声が響く。
今か今かとそちらを睨みつける先輩たちに囲まれ、肌がピリピリするような緊張感すら感じた。
「平気？」
「はぇあ」
どことなく顔の強張った一年生に声をかけるが、彼女の返事の声は裏返っている。
練習だからと言って気は抜けないけど、変に力が入っていると上手く演奏できないことだって事実だ。私はその子の肩をぽんぽんと優しく叩く。
「だーいじょうぶ。……仮に先生にすごくすごぉく怒られても、これからまだまだ良い演奏ができるって思うと、ワクワクしない？」
「それは、……とっても」
「楽しみだね」
これは、落ち着かない胸のドキドキを昂りに変える魔法の言葉だった。私が私を騙すための。
私がゆっくり噛み締めるように、それ以上に自分に言い聞かせるように言うと、彼女は少し緩んだ表情で頷いた。
扉の開く音。中の彼らが休憩に向かう合図だ。顧問がこちらを横目で見遣り、促すように顎で体育館を指し示す。
中ではいろいろ片付けを進める部員たちがいた。
男子バレー部だ。強豪故にその功績と人数の多さから体育館の覇権を握っているのは間違いない。
私たちは体育館の中に入っていき、男子バレー部は休憩に出て行く。
二つの部活が入れ違いに慌ただしく出入りしていく中、ふと視線を感じて顔を上げた。
宮くんと目が合う。もちろん同じクラスの方の。
『普通に普通の友だちよな』
和の言葉が脳裏をよぎる。
……前までの私だったら、何とも思われない程度の浅い会釈で通り過ぎたところだ。
しかし、少なからず今の私は和によって、彼を普通の友人であると思っている。
にっこりと笑って見せた。何か言おうものなら「余裕やな？」と嫌味を言うであろう先輩の隣で、挨拶代わりに。
目が合ったのはほんの一、二秒。私は後の部員が詰まらないように体育館に入っていった。
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エコ - かなけんさん» 感想ありがとうございます。メチャクチャに嬉しいのですが、この感動を言葉に表すに足る語彙力がないので、うまく伝えられなくて申し訳ないですが、本当に本当に嬉しいです。スクショしてにやにやするぐらいです。遅筆ではありますが、これからもよろしくお願いします。 (2022年3月28日 23時) (
レス) id: 3464e68ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かなけん(プロフ) - めっちゃ好きです！！毎回更新されるの楽しみすぎます！！💞 (2022年3月27日 22時) (レス) @page19 id: 4ee55b59ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エコ | 作成日時：2022年3月13日 23時
