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乾杯の音頭は私が取らせていただくことになった。
先輩はのむヨーグルト、部長はアイス、副部長はティラミス、そして私はチョコ菓子をお菓子ごと鷲掴み。
まともに乾杯らしい絵面なのが先輩しかいない中、私たちは粛々と向き合った。茶番に全力の先輩たち、自慢でしかない。
「……乾杯!」
「「「かんぱーい」」」
バリッと箱を剥く、風情も何もない音が続いた。
「文月のそれ、見たことないな。新しいやつか?」
「味は期間限定ですけど、前からあるやつですよ。食べたことないんですか?」
「ない」
「美味しくていいですよ。それに、たくさん入ってるからみんなで食べられます」
先輩の方は開けた箱を傾ける。それに合わせて転がるチョコレート菓子のつるつるのコーティングが、コンビニの光を反射していた。
彼は少し黙ってお菓子と私を交互に見て、それから顔をそらして深く息を吐く。
「文月がうちのパートで良かったって心底思うわ」
「なんですか急に。光栄です」
先輩がお菓子をつまむのを確認してから、次に開け口を部長副部長の方に向けると、彼女らは口元に手をやってにんまりしていた。簡単に言うと「あら〜」的な仕草と表情だ。
「じゃあ頑張ってくれた可愛い可愛いAちゃんに一口あげちゃお!」
「え?あ、や、悪いですよ」
有無を言わさずアイスが唇に押し当てられた。逃げ場がないことを察し、いつもより小さめに口を開けて食べる。美味しい。
「文月、人生何回目なん?こっちも食べや」
「え、う、あ、はじめてです」
副部長も同じ要領で。うん美味しい。
先輩は一応異性だし飲み物だしってことで遠慮して、女子内で交換した。
ティラミスって無限に食べられる気がする。
「や、それにしても。ようやったな、文月」
「いやあ、話、聞いただけですよ」
「ん、一年は私たちじゃなくて、文月を選んで相談してたんやろ。一ヶ月ちょっとで信頼されたんやから胸張り」
最近、一年生同士のちょっとしたいざこざがあった。そこで、なんでか私が相談相手に選ばれて、無事解決。めでたしめでたしのところを、当事者の一年生が何故か先輩方に耳に入れて、現在それを労っていただいているわけだ。
「一年たち、文月のこと『話しやすいしほわほわして癒される先輩』やって」
「あの、あの、勘弁してください」
「基本的にいつもニコニコしとるもんな」
「……あの、……」
「周りもよく見とるし」
「…………う……」
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エコ - かなけんさん» 感想ありがとうございます。メチャクチャに嬉しいのですが、この感動を言葉に表すに足る語彙力がないので、うまく伝えられなくて申し訳ないですが、本当に本当に嬉しいです。スクショしてにやにやするぐらいです。遅筆ではありますが、これからもよろしくお願いします。 (2022年3月28日 23時) (レス) id: 3464e68ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かなけん(プロフ) - めっちゃ好きです!!毎回更新されるの楽しみすぎます!!💞 (2022年3月27日 22時) (レス) @page19 id: 4ee55b59ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エコ | 作成日時:2022年3月13日 23時