素直に言えない真実は朧に隠されて。

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『そもそも、妖怪って何だっけ』

そんなの、決まってるじゃないか。
そう思った。だけれど。

『え…』

わからなくなってしまっていた。
妖怪…。妖怪…。どうしても、思い出せない。

何故か、妖怪に関する記憶が思い出せなくなっていた。
大切なものなはずなのに。

『なんでさ…。こんなの、あまりに酷過ぎるじゃないか』

私を助けてくれた君。
そんな君の名前さえも今の私にはわからない。

薄れ行く記憶にたった一つ。鮮明にずっと忘れないような大切な記憶のはずなのに。

これを除いてしまったら自分の事を語れなくなるぐらい大切なものだったはずなのに。
どうしても、どうやっても思い出せない。全てがわからなくなってしまっていた。

『時計』

身に着けたまるで石のような時計。
何だかとても大切なものだったような気がする。だけど、何が何故何で大切なのかはわからない。
どんな道具なのか。何でこんなものを着けているのか。

私の大切な記憶がただただ地面に落ちた真っ白な雪のように徐々に薄れていくのが自分でも感じられる。だけど、どうすればいいのか。それが何なのかは到底わからない。

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