素直に言えない真実は朧に隠されて。

55 ページ22

『………』

急に止まってしまった。
さっきまで、あんなにつらつらと思い出せた記憶が全くといって思い出せない。
そこで、何故か＿＿＿＿＿、止まっているんだ。

「大丈夫？」

深刻そうな表情でもしていたのだろう。
月浪くんが気にかけてくれる。

『大丈夫…。だけど、何故か思い出せないんだよね』

今の自分には何にも問題がない。
だけれど、記憶に問題がある。過去に。

まるで、さっき自分が言っていた朧のように全てが隠されてしまっているように感じる。
思い出さなきゃ…。そう思っても、到底無理。どうしても、思い出せない。

「何か…。ごめん」

月浪くんは頭を下げて謝ってきた。

『いや、謝らなくっていいから』

彼は何にも悪いことなんてしていない。
なぜ謝ったのかはしらないが、謝るようなことなんて微塵もない。

「そう…。よかった」

月浪くんは頭を上げる。

『大丈夫だって。でも、ちょっと昔の話はこれで終わりでいい？』

「うん」

月浪くんは頷いてくれた。
良かった。これ以上、思い出せそうにないから。

『ありがと』

その後も、俺たちは一緒に話しながら帰り道を歩いていった。

56→←54

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す