福沢諭吉の娘ですが。【文スト】 (ページ44)

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番外編ページ44

「お話の最中に水を差してしまい申し訳無いが失礼するよ。」

『おや、太宰』

そう小さく言葉を漏らすと諭吉君が少し不安げな顔をして此方を見る。私は慌てて笑顔を作り彼に太宰を紹介する。

『あ、えっとね彼は太宰治。君を故郷へ連れて帰る御手伝いをしてくれるんだ。』

「…この人が？」

諭吉君の記憶は齢十歳で止まっているので念のため"よく分からないが見知らぬヨコハマに連れてこられた"ということになっている。
私は取り敢えず太宰に握手をし異能力を発動するように促す。

「では少しの間宜しく頼むよ。諭吉君」

「………」

諭吉君は差し出された手を恐る恐ると云った形で握り帰した。……がなにも起こらなかった。遅効性かと一瞬思ったがそんなことはなく本当になにも起こらない。

「うん、あれだな。異能が絡み合うことによっておこる特異点」

「…では社長に異能を掛けた男の他にまだ別の異能者が居ると云うことですか」

「嗚呼、まぁ此処まで来れば後は本拠地を叩くだけだ。簡単な話、絡まっているものを全て切ってしまえばもとの状態に戻る。」

「太宰さんの異能が効かないので一時はどうなることかと思いましたけど…良かった」

そう息を吐いた敦に苦笑いを浮かべる。
正直私は急に大きくなった体のせいで服がバァンとなるのを期待したのだけれど…。
とほほ、と涙を飲み込むと晶子さんが辺りを見渡し私に問いかけた。

「社長は何処に云ったんだい？」

『あぁ、お父様なら…あ、見る？』

そう云い晶子さんの隣に行くとスマホで何枚もの写真を見せる。

『只今、絶賛お菓子タイム中さ。此がココアを飲む諭吉君。ラスクを齧る諭吉君。で、こっちが…』

「わ、分かった…もういいよ有り難う……」

少し引いた顔をされるが諭吉君が可愛いのに代わりはないしきちんと許可も取っているのでおーるおーけーというやつだ。あぁ、ぎこちなくピースする諭吉君可愛い……

『あ、後で乱歩君にも贈るね。』

「えぇ…そんなの悪戯にしか使えないじゃん」

『…悪戯？…そっか此をお父様に見せたらお父様の照れ顔が見れる……！』

僕、なんか要らないこといったかもなんて一人口角をひきつらせた乱歩だった。