福沢諭吉の娘ですが。【文スト】 (ページ26)

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変人ページ26

『……ん……何、此処……』

「ドスく～～ん、起きたよ！御姫様！！」

暫く眠っていたのだろうか。少し瞼が重い。
道化師に連れられて来たのは真白な殺風景な部屋に幾つものモニタァが置いてあると云う奇妙な光景。
彼がドス君と呼んだ方を見ると其処にはあの青年がいた。

「……お久し振りですね。」

『………ハイ』

そう云い微笑む彼に何とも云えぬ感情が頭を走るがそれよりも、と私は話を続けた。

『……何の御用ですか。お陰様で身一つだし……此では誘拐事件となってしまいます。』

手に持っていた買い物袋、乱歩君が貸してくれた帽子。先程まで持っていた筈のものが全てなくなっているのに気付きそう告げるとドス君と呼ばれた彼は首を傾げる。

「当たり前ではないですか。折角、僕が贈った帽子ではなく他の男の帽子をつけているんですから。」

『……はぁ？』

そう呆れたように帰すと道化師は焦ったように彼の回りを騒々しく彷徨く。……あの人、私がなんか云う度に動きが変わってて面白いんだよな。

「つ、詰まりだね！！ドス君が云いたいのは自分よりその男がだい」

「ふふ、ゴーゴリさん。誰が其処まで云えと？？」

「ｱｯ,御免よ！！ドス君～～！！」

何だろうか、この何とも言えない空気感は。私は一人、気まずくなりながらもすぐ近くに見えた戸を見据えドアノブに手を掛ける。

「おや、出ていかれるんですか？もう少ししたら、この街は組合によって壊滅してしまいますよ？」

「そうだよ、お嬢さん！！元々、君を此処に連れてきたのだって君を護るためなのだよ？」

後ろから降りかかる声に私は一つ足を止めると振り返る。

『______御生憎様ですけど、私、危険から引き離そうとする人よりともに闘ってくれる人の方が好みなので。』

気が付くとまたあの穴に取り込まれ気が付けば元の場所に戻っていた。拠点を知られたくなかったのだろうが十分だ。私は先程まで誰も居なかった路地にたくさんの警察官が要るのを見て顔をしかめる。

…矢張、数時間も眠っていたのか。面倒だと思いながらも必死で私の誘拐された後を探している刑事さんの持つ通信機を借り声を張り上げる。

_____福沢A、只今戻りました！！