福沢諭吉の娘ですが。【文スト】 (ページ2)

今日:20 hit、昨日:41 hit、合計:55,056 hit

太宰ページ2

…さてと新人への挨拶も済んだことだ。
私は180度、方向を変え父さんを見据える。

『さぁて、お父様何が食べたいですか。今ならなんでも作れますよ。』

「…鍋が食いたい。」

『嗚呼、牛鍋ですね。分かりました。』

「少し待てA、護衛を付けよう。太宰、国木田、乱歩、それから…。」

ちょっと待て、それは流石に多すぎないでしょうか。お父様
私は、小さく息を吐いた。

『お父様、流石にそんなに入りません。何より残っている社員大体連れて行かせるおつもりですか！』

「いや、だが…。」

父は納得のいかなさそうな顔でこちらを見る。
…国木田を見てください。私についてきたら仕事が溜まって過労死しますよ。
そんなことを言いたがる胸をグッと抑えて最善策を告げる。

『はぁ、…ならば一番残っても意味のなさそうな太宰、付いてきてくれる？』

「ふふ…姫の仰せとあらば。」

ーーー

『さてと、太宰もう良いぞ。』

探偵社を出てから約数十尺もするあたりで太宰に告げる。
すると太宰は驚いたような顔でこちらを振り向く。

「それは…私に給料泥棒の許可をくれると？」

『許可どころかお前はいつもしているでしょうに。』

全く、そう言い私が頭を抱えると太宰は嬉しそうに笑う。

『まぁ良い、そんなに仕事がしたくないなら着いてきてもらいます。』

「ええ、それが一番です。」

太宰はその言葉を待っていたかのように笑う。
これは間違えたというべきか正解と言うべきか…。

『はぁ、…お前と居ると心を読まれているようで気が抜ける。』

「……いやかい？私と話すのが。」

『いいえ、お前みたいな変人はそうそう居ないからね。面白い。』

「…ふふ、そうかい。」

太宰はそんなことをポツリと呟くと憂げに笑った。
…普段、心中しか考えていないとは思えないような綺麗な笑みで。

『にしたって太宰、お前が新人教育だなんて。意外だよ。』

「まぁ、社長の命だからね。」

『父様の！？…ならば仕方がないな。優秀に育てるんですよ。』

「…本当にAちゃんは社長が好きだねぇ。」

太宰は呆れた目で私を見つめた。
取り敢えずムカついたので腹に一発入れておいた。

『…そう言えば太宰、この間犬の餌を食べたらしいな。存分に吐いてくるといい。』

「あ、アイアイサー……ゔｳﾞ。…」

そう言い私が店に入ると同時に朽ち果てたようにしゃがみ込む太宰がいたという。