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 語らうなぞとはつゆさへ思はぬ。 ページ5

炸裂弾(メテオラ)
「スゲェ…!」

星の雨が降るように、トリオンで出来た弾丸がモールモッドに降り注ぐ。子供は目を輝かせてそれを見ており、朱雀は深いため息をついた。
異常なほどに次々にゲートが開いていく。
大規模侵攻ほどではないとはいえ、面倒なことに変わりはないのである。

「そんな悠長にしていられる状況じゃないんだけれど……忍田本部長、一般市民と見られる子供を警戒区域内で発見しました」
『そうか…負傷は?』
「ありません、ただ家に帰りたくないと…保護しますか」
『…保護は、しなくていい。あとは君に任せる』

忍田の死刑宣告とも受け取れる指示に、朱雀は肩を落とした。だが本部長に云われてしまえば逆らって子供を放り出すわけにもいかない上、ボーダー隊員としての責任があるのだ。

『…君が適任だ。何か事情があったのだろう? 太刀川隊を向かわせるから、君は子供を』
「…了解」

警戒区域外まで俵担ぎのまま連れていく。
子供を地面に下ろし、太刀川隊が来るであろう方向を見ていると、肩にかけていた外套が弱く引っ張られ、朱雀は外套を掴んでいる子供を見下ろした。

「何故帰りたくないの?」
「……」

子供は答えない。否、答えられなかったのである。その証拠に目にいっぱいの涙を堪えていた。

「少年」

朱雀は蹲踞し、子供の顔をしたから見上げる形で話を始めた。

「僕は君を無理に帰そうなんざ思っちゃいない。帰したところで、根本の解決にはならねぇからだ。それに、お前はまだ子供なんだ」
「子供扱いすんなよ!!」

相当子供扱いされるのが嫌いな子供なのだろう。朱雀は己を睨む目に、昔を思い出させられる。かつての自分も、自分の背には重すぎるものをこの子供のように背負おうとした。

「子供なんだよ。だから、その涙は堪えなくていい」

そう云って子供の頭を撫でれば、子供は耐えきれなくなり、ボロボロと涙を零した。
ズボンを握りしめ、それでも尚堪えようとするその姿に、朱雀は両手を広げた。

「──来い」

子供は堰がきれたように泣き出し、朱雀に抱き着いてわんわんと泣いた。
朱雀は我慢に我慢を重ね、泣くことも出来ずに壊れてしまう結果を見続けてきた。

「全部ここに置いてっちまえ、愚痴も、不安も、我儘も」

背中を一定のリズムでとんとんと優しく叩き続け、子供が吐き出した悲痛な叫びを相槌を打ちながら聞いた。

妹が出来て、己を見てもらえなくなったのだと。
どうしようもない不安があったのだと。

 またその苦労が果して価値の→← それがどうした苦労であったか、



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作者名:玲洛 | 作成日時:2018年1月6日 11時

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