自己満足 ページ22
ESに入社してから、数週間が経った。
毎日が目まぐるしくて新しい事ばかりだけど、茨さんを始め凪砂さん、日和さん、ジュンさんが少しずつ手を貸してくれて、
なんとかだけど着いていけている。
パンフレットの構想も順調に進み、写真も集まってきた。
なによりEdenのみんなは華があるから、どこをどう切り取っても全部表紙に使えそうな写真ばかり。
こりゃ〜選ぶのが大変だ、なんて呑気なことを考えられるくらいには、自分の中でも余裕が出来ている。
ただ一つ、変わらないのは、
茨さんとの時間だった。
「……………お疲れ様です。」
「……Aさん。……お疲れ様であります。」
茨さんに会釈をしながら、いつものように、コーヒーをセット。
副所長室の前の休憩室に、仕事終わりの夜、あるいは残業中に足を運ぶのが日課になっていった。
コーヒーがそんなに好きなのか、と言われると、そういう訳では無い。
茨さんに会いに行ってる、という訳でも、多分ない。
なんとなく、本当になんとなく、疲れた時に来ると茨さんがいて、沈黙の時間を過ごしている。
そこに何も進展は無いし、会話すらない。
たまに仕事の話をする程度。
茨さんが居心地悪そうに、無言を貫いているのもずっと変わらない。
でも、なぜだかここに足を運んでしまう。
もはや私の自己満足の時間。
たとえ私がいても何も話さなくても、私はこの静かな時間が好きだから。
茨さんには………
………………申し訳ないけど……。
ヴーッ ヴーッ
「……?」
突然、私の右ポケットのスマホが鳴り出した。
ぴくりとその場にいた茨さんも反応する。
スマホの画面には、大きく『乱凪砂』の文字。
閣下、こんな時間に…?とこぼす茨さんを横目に、電話に出る。
『………もしもし、Aさん。今、大丈夫かな。』
「はい。お疲れ様です。大丈夫ですが………どうかしましたか?」
『今日のAdamの撮影の時に、おそらくAさんのボールペンを間違えて取り違えてしまったみたいで……。ごめんね。返したいのだけれど、今どこにいるかな。』
申し訳なさそうに、電話の先でゆっくり話してくれる凪砂さん。
明日でもいいのに…と思ったが、ここは凪砂さんの優しさを受け取ろう。
電話の内容が気になるのか、茨さんがこちらをじっと見ているが、とにかく凪砂さんのもとに向かうことにした。
330人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
斉藤ちく(プロフ) - ちびさん» コメントありがとうございます。とても励みになります!細々とですが続けていきたいです。ちび様もご自愛ください! (6月9日 19時) (レス) id: 43e5963b91 (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく拝読しています。展開もドキドキワクワクで…とても楽しみにしております。雨が多く、ジメジメする時期ですが…ご自愛ください。これからも応援しています☆ (6月9日 7時) (レス) id: 190d57c004 (このIDを非表示/違反報告)
斉藤ちく(プロフ) - あめみやさん» コメントありがとうございます。ツンデレ茨からしか摂取できない栄養、ありますよね…。 (6月8日 14時) (レス) id: 771595aedb (このIDを非表示/違反報告)
あめみや(プロフ) - ツンデレな茨もまた良き (6月5日 22時) (レス) @page37 id: a179dcb416 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:斉藤ちく | 作成日時:2023年5月4日 18時