蕨姫花魁のお気に入りの遊女は……

瓜二つ ページ19

炭治郎視点


その子はカナヲによく似ていた。


匂いは似ていないけれど、顔はよく似ていた。


表情は……カナヲのように笑顔ではないけど。


伊之助「おい権八郎。そいつ、しのぶの子分に似てねぇか？」


伊之助も驚いたように女の子を見ている。


炭治郎「やっぱり伊之助もそう思うか?あと、俺は炭治郎だ」


そう言うと、カナヲによく似た女の子は訝しげに眉を顰めた。


キョトンとしたような表情はやっぱりカナヲに似ている。


いや。似ているどころじゃない。瓜二つだ。


炭治郎「君、名前教えてくれないかな？」


A「…………」


その子は俺たちを見つめるだけで、何も言わなかった。


炭治郎「あの…？」


伊之助「お前、喋れねぇのか？」


A「………」


何も言葉を発さないその子を見て、俺は思い出した。


そういえば、カナヲも話しかけても全然話してくれなかったという事を。


うーん。どうやったら話してくれるかなぁ？


俺は腕を組んで首を傾げる。


あっ！そうだ！


炭治郎「ねぇ、君！俺と伊之助が今からジャンケンするから、伊之助が勝ったら話してくれないかな？」


A「………」


その子は肯定しなかったけど、否定もしなかった。


きっと、喋ってくれるはず！


炭治郎「よし！伊之助、ジャンケンだ！」


伊之助「ああ？……まあ子分の願いだからな。やってやるぜ！」


伊之助とジャンケンをした。


結果は。


伊之助「よっしゃ！俺の勝ちだぜ。やっぱ俺最強！」


伊之助が勝ってくれた！


この子はきっと喋ってくれる！


A「……A」


期待を込めてその子を見つめると、その子は抑揚のない声で呟いた。


炭治郎「Aか！可愛い名前だな！」


Aに笑顔を向けると、その子は困惑したような匂いを出した。


炭治郎「俺は炭治郎！こっちは伊之助っていうんだ！よろしくな！」


A「………」


Aは不思議な子だなぁ。

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