逆鱗 ページ17
楼主「おい！人を呼べ！蕨姫花魁の気に障る事をするんじゃねぇ！」
そんな楼主の声は少し離れた部屋にいたAの耳にも届いていた。
Aはその言葉だけで、何があったかある程度の事を察した。
きっと、蕨姫花魁が不機嫌なんだ。
此処、京極屋では怪我人や喧嘩が起こるのは日常だ。
誰かが不機嫌になれば、それに感化されるように他の者も不機嫌になっていく。
美与「Aちゃん！善子ちゃんが大変なの！」
美与の慌てふためく様を、Aは無表情で見つめた。
美与はAの腕を引っ張って、蕨姫花魁の部屋へ行く。
蕨姫花魁の部屋は散らかっていた。
襖が外れていたり、襖が破れていたり。
とても人気のお店だとは思えない有り様。
確かにこれは楼主の人が急いで遊女に片付けさせるはずだ。
美与「善子ちゃん！大丈夫？善子ちゃん！！」
美与は鼻血を出して倒れている善子を気にかける。
楼主「おい美与！お前も片付けを手伝え！」
美与「でも、善子ちゃんが……」
美与は楼主の言葉に反発した。
そんな事をすれば、お店での立場が危うくなるというのに。
この遊郭では、楼主や女将さんの言う事は絶対だ。
逆らえば痛い目にあう。
ご飯を抜かれる事などはまだ優しいお仕置き。
両手足を縛られ天井から吊されたり、竹の棒で気絶するまで叩かれたり。
遊女達はそれを恐れて、楼主達には従順だった。
楼主「……善子なんぞ放っておけ！！」
楼主の怒号にその一帯の遊女達は一斉に固まった。
近くの部屋で仕事の準備をする蕨姫花魁とそれを手伝うA以外は。
蕨姫花魁はその重苦しい雰囲気に不愉快そうに顔を顰める。
Aも少しだけ、ほんの少しだけ動揺したように目を瞬かせた。
蕨姫花魁「…旦那さん。もうすぐ、お客さんが来る時間だけど」
楼主を穏やかな声でやんわりと止める蕨姫花魁。
その言葉に周りの遊女達も動き出す。
「急いで片付けないと、お店が回らないわ」
「ほら美与ちゃんも」
A「蕨姫花魁。紅です」
蕨姫花魁「ありがとうA」
どうやら京極屋は、いつも通り客を迎えられそうだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1142人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜餅🍎🍡🐾🐼 - 初コメですが、ずっと読ませて貰ってました！予想外の結末でしたが、凄く面白くて、自分の中でも色々想像してしまいました(〃ω〃) (3月28日 23時) (
レス) @page37 id: ad99f89c7d (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - 完結お疲れ様でした、主人公さんが幸せになれて本当に良かったです…！素敵な作品をありがとうございました。 (3月26日 22時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
はる - やば、めっちゃ最高…!!ゆっくりでいいので更新待ってます‼ (3月20日 13時) (レス) @page29 id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
Yuuna - がんばってください！！ (11月25日 18時) (レス) id: 41e2acbfbe (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - すき。、。 (11月23日 10時) (レス) @page28 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しいな | 作成日時：2023年2月26日 19時
