再会。 ページ10
海織side
あれから十年経ち、私は十七歳。
今日は海上で船が浮かんでるのが見えるから、お出かけ禁止。
もし、今日志麻が来ていたらと考えると…憂鬱な気分になる。
それに、十年あったが…一向に志麻が来る兆しがない。
『はぁ…』
つい、嫌な方向に考えが行き溜息が出る。
だけど、日が傾いてきた時急に船が海に入ってきた。
『嘘…!まさか…沈没!?』
びっくりして、海から離れようと動く。
他の人魚も驚きの速さで動いていた。
だけど、不意に紫色が視界に入る。ゆっくり見ると、それは人間だった。
『志麻……!』
とりあえず、志麻を助ける為にあちらに向かう。
そして抱えた。
だけど、重さでどんどん沈んで行ってしまう。
どうしよう…。
私は志麻を助けたいだけ、どうすればいい…?
…絶対助ける。そう思えば、大丈夫。
私は覚悟を決め、上に向かって泳ぎ出した。
体の負担が凄い…。
でも助けなきゃ…!
体に負担を掛けながらも、私は近くの浜辺に訪れ志麻を浜辺に上げた。
私も浜辺に上がり、志麻の手を握る。
『志麻…!志麻…!』
祈るように掠れる声で志麻の名前を呼んだ。
お願い、目を覚まして…っ!
その思いが通じたのか、
「んっ…」
志麻が目を開いた。
『…し、ま、、、?』
ポロポロと目から大粒の涙が零れ落ちる。
「海織……?
…っ!?俺から離れろや!!!」
ドンッと押されて、後ろに倒れ込む。
『…え、』
志麻に駆け寄ろうとして、だけど誰かの声が聞こえた為私は岩の影に隠れる。
志麻は咳き込みながらも人の声がする場所を見つめていた。
「志麻様…海に溺れたとお聞きになったのですけれど…大丈夫なようですわね」
日傘を差していて、誰だか分からないけど声音的に女性…?
それに、志麻様…?
…私が混乱していると、いつの間にか志麻とその女性は居なくなっていた。
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