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志麻side
海織にお姫様みたいと言われた時、冷や汗が頬を伝った。
確かにお姫様じゃあらへんけど、お姫様みたいな立場である事に変わりない。
しかも、王としての隣国との同盟関係を理解する為に隣国であるこの国に来たって言うたらどんな顔するんやろ。
俺は隣国の第一王位継承者やといつかは伝えなかん。
だけど、もしも…の事を考えると中々言えんかった。
「志麻?」
急に咳き込んでから黙っていると海織が心配そうに顔を曇らす、上目遣いで。
海織は俺より背が低いから、よくこちらを見つめる時に上目遣いになっとった。
でも、今はそんな海織に見惚れている時間ではない。
『…何でも、無いで』
精一杯の作り笑顔で誤魔化す。
もしかしたら、引き攣っているかもしれへんけど見逃して欲しい。
それから、カフェで色々食べて最初の浜辺に戻った。
もう日が傾き始めとるからな。
それにしても、海織と出会ってから時間が過ぎるのを早く感じるなぁ…。
また今日も終わりかぁ…。
そう未練がましく海織が海に入って行くの眺める。
だけど、海織がこちらを向いた。
そして、駆け寄ってくる。
「志麻!!!」
『んぁ?どしたん?』
「このお花!志麻が持って育てて?」
『え?』
「だって、私の家がある深い深海では育てられないかもだし…何よりこれを私だと思えば志麻寂しくないでしょ?」
そう言ってニコッと人懐っこい笑みを浮かべる。
多分、海織なりに俺を心配しとってくれたんやな…。
俺は嬉しい気分になり海織から俺があげた花束を貰う。
最初はただの人魚やと思っていたけど、数日過ごす内つドンドン知らない海織を知っていく。
もう俺はいつの間にか海織の虜になっていたんだろう。
海織にはこんな気持ち気づかれないよう満面の笑みで、
『ふはっ…!ありがとうな!海織のおかげで元気が出たわ』
海織に感謝を告げた。
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