人魚姫。【志.麻.】 (ページ3)

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海織side

来ようか来ないかで迷った結果、私は浜辺に訪れていた。

海から顔を出し、昨日と同じように疑い深く辺りを見渡す。

…どうやら志麻…は来ていないようだった。

ホットして、崖の上に座ると同時に歌を歌い始める。

「『～～♪

～～♪』」

……誰かの声と重なったのは気の所為だろうか？

いや、気づかないはおかしい。

だって、さっきから物凄く視線を下から感じる。

誰かなんて即答出来る、志麻だ。

諦めて、志麻の方を見ると志麻は喋り始めた。

「おはようさん！どうしたら、声出しもせずあんな遠くまで響く声出せるん？」

『…知らない。私はただ普通に歌っているだけ』

そう言うと、浜辺に上がらされた。

自然と人間の足になる。

ああ、そっか人間の血筋が入っている人魚は海から上がれば尾ひれではなく足になると。

でも、人間の血筋では無い人魚だとそのまま魚みたいに死んでしまう。

自分がどうなるか分からないのに、陸に上がる人魚が居るものか。

ちなみに私も知らなかった。今志麻に浜辺に上がらされたから分かったことだ。

「人魚って人間にもなれるん！？凄いやん…」

自然と志麻の笑顔がもっと笑顔に変わった気がする。

だが、私は海に戻ろうと引き返す。その私を志麻はまた手を掴んで引き留めた。

『何？』

「何で海に戻ろうとするん？俺と遊んだり歌ったりしようや」

志麻は不思議そうに聞いてくる。

私は息を吸い込んで「言っておくけど」と前置きをしてから、

『……私は人間と馴れ馴れしくするつもり無い。名前を教えたのも約束だから。貴方が教えてくれれば私も教えるという約束をしてしまったから言っただけ』

そう言った。

志麻は手を掴む力を弱める。

私は、たたっと走り出す。だけど、足は不慣れな為浜辺ですっ転んだ。

砂が口に入る感じがする。

『けほっ…』

ペっと砂を口から出して、海に入ろうとした。

…何となく志麻が気になり後ろを振り向く。

だけど、志麻は既にその場に居なかった。