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底知れない人だった ページ5

「えっ…と…?」

「あぁ、こちら私のチームメイトの観音坂独歩君です」

「初めまして…ってあれ!?さっきの!?」

緑がかった瞳がわずかに見開かれる。

病室に入ると、先生ともう一人…御友人だと思われる男性が待っていた。

なるほど、観音坂さんだったか。

先程ぶつかった男性と目の前の彼が重なる。

「どうも…」

どうりで見覚えがあるわけだ。

一人納得していると、先生が不思議そうに口を開いた。

「二人はお知り合いだったのですか?」

「さっき廊下でぶつかってしまって…大丈夫でしたか?」

心配そうにこちらを覗き込んでくる。

困ったように寄せられていた眉がさらに寄った。

先生とは違ってたれ目なんだな…

大人なのに、可愛らしい雰囲気が残っている。

「えと…Aさん?」

「あっ、はい」

観音坂さんの顔に気を取られていたのか、返事が疎かになってしまっていたらしい。

「観音坂さんはどうしてこちらに?」

「出張中に先生に会って…休憩がてら病院にお邪魔してたんです」

「なるほど」

静かな空気が流れる。先生と観音坂さんが穏やかに談笑するのを、微笑ましく思いながら黙って聞いていた。

「では時間も時間ですので、失礼させていただきます」

「はい」

「今度は一二三君も連れておいで」

ぎこちない笑みを浮かべながら観音坂さんが病室を後にする。

白いドアがパタンと音を立てて閉まる。

ふと顔を上げると、先生が慈しむような目でドアの向こう側を見つめていた。

チームメイトが大好きなんだなぁ…




ふと、違和感に気付く。

「先生」

「なんですか?」

「私、観音坂さんに名乗りましたっけ…?」

え、と先生が声を漏らす。

「ぶつかった時に会話したんじゃないんですか?」

「いえ、名乗ってはいないはずですよ」

空気が凍りつく。

「私からAさんのことは紹介してありましたが、名前までは教えていませんよ?君が入って来てからも呼んでませんし…」

「え…」

再び沈黙が流れる。

「…たまにあるんですよ、独歩君の謎すぎる言動」

私も知っていた先生の「御友人」は、底知れない人だった。

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作者名:三矢月 春 | 作成日時:2020年12月13日 0時

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