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知ってるかもしれない ページ4

「あ、先生」

久しぶりに周りより頭ひとつ分大きな背中を見つけた。

思わず声をかけると、きれいな灰色がかった髪を

揺らしながら彼が振り返った。

「あぁ、Aさん。お久しぶりです。」

「こちらにいらしてたんですね」

「えぇ。今日は友人を連れて来ていましてね」

「ご友人…ですか?」

「Aさんもご存じかもしれません。後で紹介しますよ」

「私も知ってる…?」

「神宮寺先生ー!」

「おや………それではAさん、また後程…」

「あ、はい。」

彼はくるりと背を向けると、微笑みをたたえて歩

きだした。





あれ以来、先生からの返答はない。

彼は私に興味を持ったらしく、用もないのに私の

ところに来るようになった。

「Aさん、差し入れを頂いたのでおひとつ
 いかがですか?」

「退屈していませんか?この本、とても面白いん
 ですよ。よかったらどうぞ」

…と、こんな具合に、何かと理由をつけては私に

会いに来た。




彼にとって、私は何なんだろう。






トンッ

「わっ………………!」

「うぇ………?」

考え事をしていたら、誰かにぶつかったようだっ

た。

「わゎ、すみません…!」

「あ、いえ、こちらこそ。」

「えぇと、怪我とかないですか?どこか痛かった
 りとか…」

「大丈夫です。どこも…」

「あぁあ…本当にすみません……………………こんな
 ところで人にぶつかるのも、怪我させたかも
 しれないのも、全部俺のせいなんだ…相手が
 優しくて許してくれるのが逆に辛いけど、
 きっとこれも俺への罰なんだろうな…」

「……………えと、大丈夫ですか?」

「ぇ?………………あぁ!あの、えと、怪我、
 なかったなら良かったです。急いでるんで、
 失礼しますね。」

「ぇ、ぁ、はい…」

…………………変わった人だな

先生よりは大分小柄な、30手前位の男の人だっ

た。

「どこかで見たことある気がする…」




今起きた事は一旦忘れて、部屋に帰ることにし

た。

底知れない人だった→←狼



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作者名:三矢月 春 | 作成日時:2020年12月13日 0時

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