love magic.6 ページ6
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クラシックが流れる落ち着いた雰囲気の喫茶店で焼きたてのフレンチトーストとアッサムのミルクティーを嗜む。向かいの紬くんは店長オススメのモーニングセットを頼んだようで、甘いメープルシロップとは反対の塩気のある香りに若干の羨ましさを感じながらティーカップに口をつけた。
『ご馳走様でした。やっぱり紬くんが選ぶお店はどこも料理が美味しいね』
「喜んでもらえたみたいでよかった。頑張って探した甲斐があるよ」
日当たりのいいテラス席で、ふわりと柔らかい笑みを浮かべる紬くんの髪が朝日に照らされて輝く様に目を細める。
ゆったりとした空間で寛ぎながら朝食を摂るのは久しぶりだ。実はお店に入った辺りから鞄の中のスマホが何度もメッセージの受信を知らせていたのだが、一度確認した際に廃人から「今日は俺とゲームする約束じゃなかった？」「今どこにいんの」「電話出ろ」と立て続けにLIMEが送られてきたから咄嗟に電源を切ってしまった。
昨夜夕食の後もいづみちゃんとの女子会を優先したためさぞご立腹なのだろうが、元々「劇団に顔を出すついでにゲームに付き合う」という名目で天鵞絨町にやって来たのだから多少は大目に見てほしい。
「そういえば、Aに聞きたいことがあったんだけど」
『うん？』
「……気を悪くさせたらごめん。無理に答えなくてもいいから」
気まずそうに視線を逸らした紬くんに首を傾げる。彼がここまで言い淀むなんて珍しいなと思っていると、意を決したように紡がれた「至くんと…その、復縁とかって考えてたりするの？」の問いにああ、そういう話かと一人納得した。
至と私が過去交際していことは劇団でも周知の事実だ。後々バレてトラブルに繋がったら困るからと二人で相談して総監督のいづみちゃんに打ち明け、彼女から劇団員へと伝わった。
当初は何かと気を遣われていたようだが未練がないことがわかるとみんな普段通り接してきたし、最近じゃ私達の関係に触れる人もいなかったけれどやはり気になる人は気になるのだろう。紬くんだって何かしら思う所があるからわざわざ聞いてきたのだ。
『復縁かぁ…私は考えたことないな』
「一度も？」
『うん。それに、次お付き合いする人とは結婚まで考えたいから』
「あー…至くんは……生活力ないからね」
『でしょ？あの歳で部屋の片付けも出来ないなんて壊滅的だよね』
もし、仮に私と至の過去を良く思っていない人がいたのなら。彼らの芝居に何かしらの悪影響を及ぼしているのなら。
＿＿＿そろそろ引き際を、見極めなければ。
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作者名：海空
| 作成日時：2017年3月17日 9時
