【東卍】ド健全()な新刊出しただけなんですが？？？【梵天】

27冊目 ページ28

.



若干霞がかった緑黄色のページを閉じ、余りの倦怠感と無力さに暫く錆びたフェンスに寄りかかってはその場に蹲る。




途中で1つ、クシャミをしたのは言うまでもない

それよりかずっと冷えた目で僕を見下すマイキー君の方がヤバかったけども、強いて言うとするならばこの人も共犯ですわ。




数十分近く、寒空の下北風が吹き抜ける屋上で2人とも雑誌を読み耽っていたのだが


予想だにしなかった怒涛の展開に追い付けなくなったのは、正直言って否めない。




『推し君第1候補が、いっちゃん最初に死んだ〜…』

「お前、幸薄そうなキャラ好きだなぁ」




嫌々そうに付き合っていた彼も、後半からはしっかり読んでいたみたいで茶々を入れつつ大まかな感想もくれた。

…分かった、反社ってツンデレ()なのね把握



何やら盛大な勘違いもかましたところで、丁度ポケットの中から着信音が


携帯が小刻みに揺れると共に、反応の薄い内容のメールが1件入ってくる。これは…鶴蝶さんだな。




『あぁこの人か…
餌付けされそうになってたわ、危ね』

「さらっとスゲェこと言うなよ」




件名に書かれた故人の名前でようやっとピンときた
そうだこの人、謎に美味しいモンばっかくれる人だった。



ケーキにプリン、ドーナツなどとたった数日に亘って様々な物を与えられてきたものの


そんな彼を偲ぶ気なんて釈明される前からさらさらない。




『何したんですー？ この人』

「…最初は個人で済む話
だけど、ギャンブルのため妻を嬢に売り飛ばした挙句
1つの会社に関わる機密情報を他社に流出」




oh......



思った以上のクズっぷりに笑いが止まらず、
笑い声は寧ろ悪化するばかりでマイキー君の眉間にも皺が寄り始める。



彼もなんとまぁ災難だなぁ

その違法賭博自体を経営してるクズ本元にも次いでに皮肉られてら。



僕に菓子をあげていたのも罪滅ぼし程度としか思えなくなっちゃう、美談が醜聞に変わる瞬間だ。



え、冷淡だって？


低劣で結構、元より自分はそんな性分だし付け加えてここではそうでもしないと精神が保てない。



目に入って手が届く範囲でなら兎も角、下手に口出ししない方がいいでしょ？

死人に口なしになる前までには人生謳歌してたいんだわ




それに…自らぬけぬけと作った借金の為、晩飯の銭にさえ喘ぐ他人なんてどちらにせよ知ったこっちゃないじゃん。



「素知らぬ振りして無視決め込む」


僕が新たに覚えた、裏社会ならではの処世術と言えよう。

28冊目→←26冊目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す