ヒューマンバグ大学短編集５ (ページ16)

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可愛い子には……　香坂　怖甘？ページ16

*非戦闘要員夢主

「随分と遅かったですね。あぁ……トラブルにでも
　巻き込まれましたか」

当初の予定から数時間も経過した頃にAはマッド・カルテル
日本支部のアジトに戻って来た

その理由が今、香坂に手渡した資料を狙った半グレから逃げる為
だったなんて言える筈がない。そんな事を知られたらどんな罰を
受けるか分からないからだ

「頬の傷。ここを出る時にはついていませんでした
　……そして若干の息切れ」

しなやかな指先を頬へ滑らせるとほんの少し声のトーンが下がる

「A。正直に話しなさい」

「ひっ……！」

「話さないのならどうなるか分かるね？」

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「全く。そういう事なら始めから言えばいいものを」

「うぅっ、す、すみませ……」

結局、圧に負けたAは全てを話した

「書類一つまともに持ち帰られないなら話にならない」

「……」

「可愛い子には旅をさせよ」

「え？」

「……なんて言葉がありますがAさんは旅をさせたらそのまま
　帰って来そうにない」

香坂は未だに泣き続けるAを抱えるとその上質なソファーへと
ゆっくり倒し……

「囲ってやろうか。何処にも行けないように」

その痛々しく残る頬の傷に唇を寄せた

「こ、香坂さん。あの」

まるで人が変わったようだとAは思ったがそれは本性を
露わにしただけに過ぎない

これこそマッド・カルテル日本支部長である香坂の本来の姿なのだ

「俺はどうもAには甘くてね。一人立ちしたいという願いを
　無碍には出来ないから簡単なお使いを頼んだが……」

書類そのものに大した内容は記載されていない。あくまで
これはAを試すテスト。そんな事に重要書類を利用する程
馬鹿じゃない

ただ……その意地の悪い真似がこの傷を作ったのは事実。それに
ついては香坂も多少は罪悪感を感じていた

「今後はそんな事を言わないように。分かったな？」

自分の発言一つ一つに怯えるAの姿は何ともそそられる。
頬に落とした唇は今度、額へと押し当てられた

「返事はどうした」

「……は、い」

「それでいい」

香坂は一層、笑みを深める。そしてそのまま震える唇へと
自身のそれを寄せ……

Aが本当に囲われるのはそれからすぐの事だった

*